地域経済とソーシャルイノベーション

1粒1000円のライチ 写真=Waki Hamatsu

第2次安倍政権の政策として掲げられた地方創生では、地域での自立した事業の構築を促しています。

この流れをうけて、宮崎県の中央部に位置する人口1万7000人の新富町は、持続可能な地域を実現するために、2017年に地域商社「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構」(略称:こゆ財団)を設立しました。私は、全国各地で起業家育成事業に携わっていたところ、当時の町長からこゆ財団の代表理事に指名されました。

こゆ財団が行なっているのは、特産品などで稼いで人材育成に投資し、持続可能な強い地域経済をつくることです。主には、農業が盛んである利点を生かし、特産品のブランド化と販路開拓に取り組んでいます。

第一に私達が目をつけたのは、新富町で生産が行われているライチです。私たちは生産者と協働して「新富ライチ」というブランドをつくり、地域を代表する産品に育てました。

宮崎といえば、多くの方がマンゴーを思い浮かべるでしょう。2019年4月にはマンゴーブランド「太陽のたまご」が初競りで50万円をつけ、変わらぬ存在感を見せています。宮崎には他にも、日向夏やキンカン、パパイヤなど、さまざまなトロピカルフルーツが生産されています。そんな中でも生産量が十数トンと圧倒的に少なく、貴重なのがライチです。

ライチは生産量も生産者も少ないことから、マニュアルと呼べるものがありません。生産技術が確立されておらず、わずかな温度や湿度の変化に影響を受けやすいこともあり、安定した生産が難しいといわれています。そのため、国産ライチは国内に流通しているライチのわずか1%程度。残りは海外産の冷凍品が占めています。

そんな貴重な国産ライチは、主に鹿児島と宮崎で生産されています。なかでも宮崎県新富町では、生産者が10年以上にわたる試行錯誤の末に、糖度15度以上でゴルフボールよりも大きなライチの生産に成功しました。

この大粒ライチを「新富ライチ」としてブランド化し、空港での土産品やふるさと納税の返礼品として販売したところ、全国放送のテレビや新聞で多く取り上げられ、瞬く間に大ヒット商品となりました。その結果、かつては「通り過ぎる町」と言われた新富町が、今では大手百貨店や海外の有名な菓子メーカーが視察に来るようになりました。

この原動力となったのは、大粒ライチの生産者である森哲也さんの使命感と覚悟、そしてリーダーシップです。「新富ライチ」誕生から大ヒットにいたるまでの過程をご紹介します。

文=齋藤潤一 写真=Waki Hamatsu

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