このようなサステナビリティに配慮した素晴らしい活動の数々ですが、最終的に私たち消費者が気になるのは“美味しいコーヒー”や“感動の一杯”に繋がるのかというところでしょう。それについて坂尾氏は「確実に繋がる」と語ります。
「生産工程において資源を循環させることは、コストメリットや手間の軽減にも繋がりますので、コーヒー豆の生産自体により力を注げるようになります。浮いた資金で設備投資もできますし、新しい製法を試す余裕も生まれる。何よりのそのような農園主たちはさまざまな観点で深く思考しているので、クオリティを上げることにも真摯です。なので、結果的に良いものが出来上がるのだと思います」
今回訪れたのはHacienda Tobosi、La Pira、BRUMAS del ZURQUI他、6つのコーヒー農園。
そこには、もちろん坂尾氏ら買い手の目利きや努力もあります。
「僕たちはどこで・誰が・どのように作ったものかというトレーサビリティに力を入れています。そうしてすべての工程において高いクオリティが担保されているかを確認することで、お客さまに自信を持って美味しいと思えるコーヒーを提供することができるのです」(坂尾氏)
ただの「ブランディング」ではない
都内を中心にスペシャルティコーヒーの店が増えていますが、サステナビリティやトレーサビリティ、サーキュラーエコノミーがその味に影響しているというのは興味深い話です。
一見すると「社会的な活動」や「ブランディング」として捉えられがちな取り組みが、品質を高めるため自然環境に配慮した新しい生産体制を作り、それによって経済的なメリットを生み出し、消費者に今まで以上に美味しいものを提供する──まさに理想の循環型モデルがそこにはありました。
コーヒーの生産は第一次産業であるがゆえに、自然環境とビジネスが密接に関わっています。自然環境が破壊されるということは死活問題。そのためアクションを取りやすいという側面もありますが、第二次、第三次産業においても大いに参考になるのではないでしょうか。
このようなモデルケースを、自分たちのビジネスに照らし合わせてみることが、地球環境にも優しくかつビジネス的にもメリットがあるサーキュラーエコノミーの創出に繋がれば、未来は明るいと感じます。
坂尾篤史◎ONIBUS COFFEE代表。ONIBUS COFFEEを都内に4店舗、ABOUT LIFE COFFEE BREWERSを2店舗(渋谷&ホーチミン)、RATIO coffee & cycle(外苑前)と計7店舗の経営に携わる。2019年5月には大型のロースタリーを併設した旗艦店「ONIBUS COFFEE八雲」をオープンさせた。
連載:クリエイティブなライフスタイルの「種」
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