年金や資金調達を考える時に必要な「逆算」の考えは、夏休みの宿題から学べる

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スタートアップ企業が直面する危機

将来から逆算して目の前の課題を洗い出す作業は人間だけではなく法人にも必要だ。筆者は現在スタートアップ企業数社のCFO(最高財務責任者)を務めており、資金調達のお手伝いをさせていただいている。スタートアップ企業にとっては資金調達は非常に重要だが、難易度も非常に高い。

資金調達は外部の環境にも大きく左右される。ここ数年の資金調達の環境は非常によかった。「●●社が総額●億円を調達」といったニュースを毎日のように目にしたのではないか。

しかし、本来、資金調達は資本政策に乗っ取って計画的に行われるべきものである。たとえば3年後にIPO(証券取引所に株式公開すること)を目標とするのであれば、その間に何回資金調達を行い、各フェーズでどれぐらいの額をどれぐらいの株式比率で調達し、そのお金を何にどう使っていくのか、を計画的に経営陣と考えていく。まさに逆算そのものである。

いろいろな投資家と話をしていると、明らかに昨年末ぐらいから先行きの見通しがネガティブになっている。そうなると、スタートアップ企業からすれば、これまでよりは資金調達がしにくくなると考えられる。これまでの好環境のなかで、予定していた回数より少ない回数でIPOまでに必要な金額を調達できた企業はいいが、好環境に舞い上がり、計画を無視して目先の資金を調達しにいったものの、まだIPOまでに資金が必要になるという企業には厳しい未来が待っているかもしれない。

なぜなら、好環境時にどう考えても理論上おかしなバリュエーションをつけてまで資金調達をしてしまっている場合、投資環境の雲行きが怪しくなり、投資姿勢を保守的に変えつつある投資家にとっては、その企業への投資がリスクにしか思えなくなるからだ。そうなると、好環境時に多額の調達をして一見きらびやかに見えるスタートアップ企業であっても、この数年で資金繰りに困る企業が何社も出てきてもおかしくはない。外部環境に惑わされず、いかに逆算して計画を立てるかが重要かということが分かるだろう。 
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文=森永康平

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