年金や資金調達を考える時に必要な「逆算」の考えは、夏休みの宿題から学べる

Akiko Aoki / Getty Images

この1か月は、仕事を通じて将来のことから逆算する習慣の重要性を実感することが多かった。所与のデータを基にして、将来のことから逆算するのは、大人ですら出来ない人が多いので、まだそれほど長い時間を生きていない子どもにはすごく難しいことなのかもしれない。

しかし、この習慣がついているかどうかで、子どもの人生の質を変わりかねない。まだ明確に方法論まで落とし込めていないが、一緒に時間をかけて感覚を身に付けてあげるのが、親に出来ることなのだろう。

炎上した金融庁のレポート

6月3日に金融庁が公表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書がSNSを中心に炎上している。詳しく知らない方のために概要を簡単に説明すると、夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯が年金に頼って暮らす場合、老後に約2000万円が不足するという試算が報告書の一部に書かれており、その箇所だけが取り上げられ社会問題と化しているのだ。

同月16日には「年金返せデモ」が行われ、主催者発表では2000人が集まったという。テレビでニュース番組を見ても、連日各局が本件について特集をしている。報告書を作ったワーキンググループからすれば、当初期待していた形とは違うかもしれないが、かなりの影響を世の中に与えたことには違いない。

この報告書は全部で51ページあり、最初から最後まで読むのは時間がかかるかもしれないが、筆者が全て読んだうえでの感想を言うと、なぜここまで炎上したのか理解が出来ない。ここまで社会問題になるのだから、かなり斬新な内容、または衝撃的な内容が書かれていたのだと思ったのだが、書かれていることには全く目新しい内容がない。すでに全ての人に公開されていた統計データを基に、平均値を使って実に簡単な計算で試算をしているだけなのである。

それにも関わらず、ここまで問題が大きくなったのは発表元が金融庁というのもあったのかもしれないが、意外と所与のデータを基に将来から逆算をする人が少ないとも言える。

総務省、内閣府、厚生労働省などのホームページ上で発表されており、誰もが閲覧できる資料から必要な数字を抜き出し、四則演算をすれば2000万円前後は不足するという試算は誰にでも出来ただろう。実際に細かくデータを見ていけば、想定される不足額が2000万円よりもはるか上にいくケースもあるだろう。

自分の人生にかかわることなので、子どもと一緒にデータをダウンロードしたうえで試算をしてみて、その結果から今から何をすべきなのかを話し合ってもいいかもしれない。
次ページ > 外部の環境にも大きく左右される

文=森永康平

ForbesBrandVoice

人気記事