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ボディカメラを装着した米警察

米国の警察官向けボディカメラの最大手企業の「Axon」は6月27日、倫理的な課題が解決されるまでは、警察に納入するプロダクトに顔認識技術を搭載しないと発表した。
 
同社CEOのRick Smithはフォーブスの取材に「顔認識技術は倫理的課題を抱えており、まだ商用化すべきではないと判断した」と回答した。「このテクノロジーは精度がまだ十分ではなく、偏見の排除も行えていない。技術の向上を待ち、倫理的な問題にも取り組んでいく」
 
Axonは警察向けの電気ショック銃「テーザー銃」を開発した企業で、かつてはTaser Internationalという社名だった。同社はアメリカ自由人権協会(ACLU)のメンバーを交えた倫理委員会を結成し、今回の判断に至ったという。
 
カリフォルニア州議会は、顔認識技術の警官のボディカメラへの搭載を禁止する法案を5月に可決させ、6月に上院の承認を受けた。AxonのSmithはこの法律を支持しているが、この分野の企業は法律で縛られる前に、テクノロジーが社会に与える影響を十分考えるべきだと述べる。
 
「長期的視点に立てば、企業は自主規制を行うほうが良い結果が得られる。技術的に可能だからといって、倫理的問題が解決される前にその技術を売り出せば、結果的に厳しい規制を生む」
 
Axonの自主規制により、利益を得るのはアマゾンかもしれない。アマゾンは社内から沸き起こった「顔認証システムRekognitionを政府機関に販売すべきでない」という提案を、5月の株主総会で否決していた。
 
しかし、Axonの倫理委員会のBarry Friedmanは、今回の決定は同社の売上にさほどの影響を与えないと述べる。「社会的に正しい決定を下した結果、会社の利益が急減するという事にはならないだろう」
 
Axonの今年第1四半期の売上は前年比14%増の1億1600万ドル(約125億円)で、そのうち5000万ドルがボディカメラだった。90年代にテーザー銃で注目を集めた同社は、警察が撮影したビデオをAIで編集し、顔をぼかすソフト「Redacting」を開発した。
 
Redactingの編集技術を用いて、個人のプライバシーを守りつつ警察が暴動などに対応する現場映像を公開すれば、権力の透明性を高めることができる。Axonは今後も顔認識を用いたトラッキング技術の開発は止めないという。
 
テクノロジーの「本当の価値」
 
アルゴリズムはボディカメラで取得した映像から、個人の動きを追跡することが可能だ。データベースが整備されれば、大規模な監視も行えるようになる。しかし、今のところAxonはボディカメラの顔のトラッキング技術の適用を、基本的な範囲にとどめている。
 
「警察がデモ隊に発砲した場合を考えてみよう。市民から激しい抗議が起き、警察に現場映像の公開を求めるだろう。その場合、警察は映像から特定の顔をぼかして公開する必要がある」
 
Smithは、このような目的での顔認識技術の活用は社会のメリットになると述べる。しかし、これが実用段階になるのはまだ先の話だ。だからこそ彼は、顔認識技術を一括りに違法化するような法律には反対の立場だという。
 
「今回のAxonの判断によって、一部の顧客が競合に流れるかもしれない。しかし、社会的に正しい行い事業を行えば、長期的に良い結果を生めるというのが当社の考えだ」とSmithは話した。

編集=上田裕資

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