シリコンバレーが本気で考える「農業テクノロジー」の未来

野菜の一大産地であるサリナスバレー(c)shutterstock.com


Jhaは、アグリテック向けのAIモデルを構築する難しさについて次のように述べた。「会計の不正を検知するのであれば、過去何十年分のデータを分析してパターンを把握すればいい。しかし、農業や食品の分野はデータセットがないため、ゼロから蓄積しなければならない」
 
今日開発されている農業用ロボットは、まだ精度が低い点が課題だ。「ブロッコリーやイチゴの収穫ロボットは、人間の60%〜80%の生産性しかないのが実情で、ビジネスモデルを再考する必要がある。人間に取って代わることを目指しているのであれば、それはすぐには起きないだろう」とKellermanは語った。

最大の課題は「人手不足」
 
Kellermanによると、農作業の自動化とは、コンピュータが人間に代わって作業を行うことだが、だからといってロボットが人間から仕事を奪うわけではないという。その理由は、農業はそもそも人手が不足しているからだという。カリフォルニア州が深刻な水不足に陥った際でも、Kellermanは生産者から「それよりも大きな問題は人材の確保だ」と言われ、驚いた。
 
Yamaha Motor Venturesが自動化を手掛けるアグリテックに出資することを決めた理由も、人手不足の解消だったという。「我々が投資をする目的は、農作業から人間を排除することではなく、労働市場に存在するギャップを埋めることだ」とKellermanは述べた。
 
JhaもKellermanに賛同し、次のように述べた。「カシューナッツを1キロ近くも検査し、24種類ある欠陥を探して3分以内に決断をしなければならない作業を人力で行っていると、脳が疲弊してしまう」
 
Kukutaiは、アグリテック企業は大きな需要が見込める市場をターゲットにするべきだと指摘する。KukutaiがKellermanと共同で出資した「Invert Robotics」が良い例だ。同社は、貯蔵タンクの検査と清掃を自動化するサービスを提供している。
 
「我々は、Invert Roboticsがターゲットとする潜在市場の大きさを聞いて驚いた。タンクの中に入って検査や清掃を行う作業の市場規模は、数十億ドルもあったのだ」と彼は語った。

編集=上田裕資

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