Close RECOMMEND

フォーブス ジャパン ウェブ編集部 エディター


「とにかく忙しいんです、アマゾンの元の仲間たちからも『飲まないか』とひんぱんに誘ってもらうんですけど、全然行けない。

本当に、仕事は見えるところだけではないと思いますね。目に見える店の仕事はもちろん、バックエンドの仕事がめちゃくちゃ忙しいんです。ありがたいことですが、外食産業の方々から店内BGMのキュレーションの依頼が頻繁にあったり、今は、京都のホテルの部屋のプロデュースも引き受けています。定休日の月曜日は、日帰りで京都に行ったりしているんです。

アマゾン時代はもちろんものすごく大変だったけれど、週に2日は休めた。年に2回は長い休みも取れました。ところが、waltzを始めてからはそんな休みはない。でも、自分で作った仕事だから、それが苦になっては仕方がないですよね」


ちなみに、アマゾンでの最後の仕事になったのは、「MVR(マスベンダーリクルーティング)」という、プロダクト横断でグローバルのセレクションを拡大する大役。40〜50人のチームを任された。日本法人社長のジャスパー・チャンからの「彼しかいないだろう」という推薦だった。

「オセロの駒を黒から白にひっくり返す」ように

「実は自分が起業するとは思っていなかったし、アマゾンを辞めることも基本的には考えていなかった」という角田氏が、「アマゾン時代、予測を100%裏切られたこと」があるという。それは、「しぶしぶ引き受けた『消費財』ストアの仕事が、結果的にアマゾンでのキャリアの中でもっとも充実した仕事になったこと」だ。

2006年、角田氏は消費財、すなわち「ヘルス&ビューティー」、スキンケア製品やヘアケア製品などのストア立ち上げを任される。

「正直、まったく興味がない分野でした。でもふたを開けてみたら、P&Gや花王、ユニリーバといった世界を代表する一流企業がクライアントでもあり、挑戦しがいのあるマーケットだった。商談には、P&G出身である、アマゾン・ジャパンの社長、ジャスパー・チャンを引っ張り出して一緒に行きました」

消費財事業部門時代の部下で、現在はECコンサルティングを手がける大友俊治氏は、「角田さんは、当時本屋だったりCD屋だと思われていたアマゾンに消費財を売っていると知らしめた人であり、今のアマゾンを作った一人」と振り返る。角田氏のプレゼンが大手の消費財メーカーの意識を「オセロの駒を黒から白にひっくり返すように」変えていくのを、社長のジャスパー・チャンとともに目の当たりにしたという。

「とくに、当時ネット販売に非常に消極的だった花王から、営業予算をはるかに超えるマーケティング予算を引き出したことは、アマゾン史上でもエポックメーキングな事件でした。アイスブレイクになったのは、角田さんのプレゼン。花王の商品は、朝起きてから夜寝るまであらゆるシーンで利用するものが多いことに注目して、『24時間営業』のアマゾンで、多くの人の需要に応え、手に取ってもらうことで『Life with 花王』を実現しましょう、とやった。相手の強みに共鳴し、相手に将来の利得を想像しやすくさせる提案でした」

アマゾンにおける花王の現在の売上げ・広告投資額は消費財事業部で1位、2位を争う規模になっているのではないか、と大友氏はいい、角田氏こそがそのきっかけを作った人と指摘する。

文=石井節子 撮影=帆足宗洋

PICK UP

あなたにおすすめ