「医師は、記録の入力などしたくないものだ。彼らは患者の診察に専念したいと考えており、それを可能にする環境を整えることが重要だ」と「Saykara」の創業者兼CEOであるHarjinder Sandhuは話す。
シアトルに本拠を置くSaykaraは、AIや機械学習を用いて医師の問診結果を自動記録するアプリを提供している。このアプリは、会話の中の重要なポイントに絞ってEHRに記録してくれるため、医師は患者の診察に専念することができる。
これまでは、医師が手動でアプリを起動しなければならなかったが、最新のアップデートで自動的に作動することが可能になった。
ヨーク大学でコンピュータサイエンスの教授を務めた経歴を持つSandhuはシリアルアントレプレナー(連続起業家)で、これまでに音声認識を用いたヘルスケア事業を3社立ち上げている。
2000年に設立した「MedRemote」は、医師向けの書き起こしソフトウェアを提供し、2005年にNuance Communicationsに買収された。Sandhuは6年間会社にとどまった後、患者のフォローアップを自動化する「Twistle」を立ち上げた。その後、2015年にSaykaraを設立した。
「医師の多くは、診察中にスクリーンを向いてデータを入力したがらないため、夜に作業を行うことになる。長時間労働が続くと、バーンアウト(燃え尽き)につながる」とSaykaraは話す。
Sandhuが目指すのは、医師と患者の会話の中から必要な情報だけを抜き取り、入力作業を完全に省略できる洗練されたソフトウェアの提供だ。短期的には、医師が症状を患者に質問したり、確認する音声を認識することに特化するという。
医師は、Saykaraが書き起こした記録を見直し、内容の精度を確認する必要がある。同社によると、そうした時間を含めても、医師がデータを入力する時間を最大70%削減できているという。
Sandhou によると、Saykaraを導入したことで問診を効率化し、プライベートを充実させることができた医師が複数いるという。「ある医師は、夜に自由な時間が増えたため、4年ぶりに本を読むことができたと喜んでいた」とSandhouは話す。
PitchbockのデータではSaykaraはこれまでSpringRock Ventures やElevate Innovation Partners、Madrona Venture Group などから753万ドル(約8億1000万円)を調達している。
「我々は、医師の業務に大きなインパクトを与えている」とSandhuは語った。