ただしこれは、「イタリアの伝統が海外の企業の手にわたった」、数多い事例の中のほんの1つでしかない。「スターバックス」のエスプレッソや「ドミノピザ」の例を挙げるだけでも十分だろう。
「こういった、イタリアの伝統が海外に流出して成功をおさめているという現状に刺激を受けました、これをきっかけに、イタリアから始めることに決めたんです。もちろん、本物のイタリア人が作るパスタのバリューは、海外での方がバリューはプレゼンしやすかったんでしょうけれどね。まずは、ある程度おいしいパスタを提供する『地元イタリアの』レストランと張り合いたかったんです。地元から始める、というプロセスを経ることで、いずれ海外での出店を決める時に、ぼくらのプロジェクトに付加価値が出てくるんじゃないかと考えています」とアルベルト。
Miscusiは現在、ミラノに6店舗、トリノに1店舗ある。2019年内にイタリア全体で全12店舗になる予定。
こうして、手打ち生パスタを製造し、その場で提供するパスタ屋1号店は、2017年2月、ミラノのチンクエジョルナーテ地区に誕生する。そして現在は、ミラノに6店舗、トリノにオープンから間もない1店舗がある。
毎月、5万人以上の顧客にパスタを提供。このスタートアップ企業は、450万ユーロ(約5億5200万円)の売上げとともに2018年度を締めくくり、2019年内にはさらに6店舗のオープンと売上げ1千万ユーロ(約12億2600万円)到達を目標にしている。これは、スペインから開始予定の海外展開の足場ともなるステップだ。
こうしてみると、彼らの進む道は平坦で、成功が保証されているかのようではあるが、この種の企業が直面する可能性のある問題は忘れてはならないだろう。
Courtesy of Miscusi
なぜなら近年、パスタは低炭水化物ダイエットの影響で、悪者呼ばわりされることが多かった上、その影響はとくに女性間や夕食時に顕著だ。実際に、ミラノでにぎわっている事業体といえば、ポケバー(訳注:ハワイアン料理ポケボウルの専門店)やフュージョン系のレストランだ。
「ぼくらには確信があったんです。パスタは、オフィスワーカーのお昼休憩時に喜ばれるはずだと」フィリッポとアルベルトが語る。「夕食の時間帯は難しい挑戦だったんですけど、結果として、乗り越えることができました。売上げの70%は夕食の時間帯から出ていますし、ターゲットにしていた女性顧客が、全体の80%を占めています」