サラリーマンの海外移住 書類では「国への貢献」が審査される

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職務経歴書には決まったフォーマットなどなく、ネットで「CV Format」などで検索し、それらを参考に自分の好きなように書けば良い。また、日本企業にありがちな不思議な肩書き(課長代理など)や社内でしか通用しない役職は、適切なものに改めるべきである。自分の名刺を裏返し、伝わるかどうかも考えないまま職務経歴書に記載してしまうようでは、日本文化でしか通用しない人材だと表現しているようなものだ。

部署の表記も注意が必要だ。最悪なのは、例えば営業部営業一課のような全く情報の価値がないものを記載してしまうこと。「Sales Department 1, Sales Division」などと書いてある職務経歴書を、仮に私が見たらまず採用しないだろう。限られたスペースに適切な形で情報を詰め込むことができない人間という印象を受けてしまうし、そもそも職務経歴書の意図を理解していないということになる。

では、どう書くべきなのか。それは元の会社の機密に触れない範囲で相手に伝わる形で書けばよい。例えば、自動車の車体設計であれば「Chassis Design Department」と、シンプルに記載すれば良いだけのことだ。

「◯◯部◯◯課」という表記にこだわる必要などない。部署の名称よりも、どういう組織に所属し、どの階層(管理職なのかヒラ社員なのか)で、何をやっているのかを伝えることが大切なのである。とにかく形よりも中身、日本人が苦手なところであるかもしれない。

次に必要となるのがカバーレターだ。こちらもフォーマットなどなく、検索をすれば山ほど出てくるので、好きなものをベースに自分流に仕上げれば良い。要は志望動機などを書けば良いのだが、気をつけるべきは文法的に完璧すぎる文章にしないことだ。

自分が英語なりスウェーデン語なりを完璧に話せるのであれば問題がないが、そこまで完璧な文章を書けない人が外国人の友人に添削をしてもらい、あたかもネイティブであるかのようなレターにしてしまうと、相手側としては「完璧な英語を話す人」として認識してしまい、後の(スカイプ)面接で現実とのギャップに落胆してしまう。

文法上の致命的なミスは避けるべきだが、必要以上に添削をする必要はない。自分が書いた文章に自信が持てないレベルの語学力なのであれば、当然だがその時点で海外企業への転職活動は諦めるべきだろう。

職種にもよるが、私のような自動車業界の研究開発業務では、英語は完璧でなくてもよい。TOEICで500〜600点もあれば十分可能性はある。この場合、英語よりも大切なのは専門性だ。



日本が誇る自動車産業は世界中から注目されており、どんな図面を描くのか、どんな品質保証のやり方をしているのか、スウェーデンに限らずこれらを表現できて、会社の成長に新しい風を吹き込みながら貢献できる人間にこそ労働許可を出したいのだ。
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文=吉澤智哉

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