独自の販路が起爆剤に
では、無名企業の新商品はいかにしてブレークしたのか。実は発売から最初の4年、玩具屋に限らず、理容店からガソリンスタンドまであらゆるところに営業したが見事に売れなかった。気がつくと、会社の累積赤字は8000万円を超えていた。
逆転の舞台は書店にあった。ある店の児童書エリアに体験コーナーを設置してもらうと、一気に火がついたのだ。書店との相性は抜群だった。自ら考えて組み立てる「知育ブロック」という特徴に、子どもだけでなく、親も飛びついた。吉條は近畿一帯の書店を回り販路開拓。その後、全国に広め2000店舗をカバーした。
2000年代も後半になると、書店数が激減し、雑誌や書籍の販売は落ち込んだ。ところが、である。スマートフォンの時代が幕を開け情報が氾濫すると、若い世代には、自分の頭で考える力が求められるようになり、知育玩具の需要はむしろ拡大。「LaQ」の時代が到来したのだ。
この波を逃すことなく、ヨシリツは独自のエコシステムを築いていった。「LaQ」の楽しさを伝える体験会を精力的に開催。保育園や幼稚園、学童保育などが導入するケースも増え、これが家庭での購入を後押しする好循環を生んだ。
ユーザーが自作の創作品を持ち寄る仕組みも効果的だった。ヨシリツでは、誰でも応募できる「LaQ」の創作品コンテストを毎年開催。17年度は応募総数が4300点を超えた。創作品の製作を趣味とする大人のファンも少なくない。
ヨシリツ代表取締役の吉條宏。奈良県吉野郡の本社ショールームには、「LaQ」でつくった作品が所狭しと並べられている。手のひらサイズの動物やキャラクターから、50cmを超える怪獣やロボットなど、種類は実に豊富。
70歳を超え、吉條は「最近は新たなアイデアが浮かぶことも少なくなってきた」と話す。だが心配はいらない。消費者がアイデアを無限に広げ、「LaQ」の文化を育んでくれる。