ビジネス

2019.07.12 07:30

原価を公開するアパレルブランド 透明性とリスクの狭間

サンフランシスコのEverlane店舗


20世紀のビジネスは、「原価がバレない」ようにすることが、何より重要だとされてきた。しかし、隠し事のできない、あらゆるものの「透明化」が進む世の中にあっては、むしろ積極的に情報を出した方が、消費者からの信頼を勝ち取れる。そして、情報のうち「原価」は、消費者が欲しがる情報の最たるものだ。
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Everlaneの場合、この戦略が今のところうまくいっているように見える。企業のスタンスに、消費者だけでなく従業員も共感し、ファンになっている様を筆者は目の当たりにした。しかし、この戦略には注意しなければならない点もいくつか存在する。

まず、原価公開のタイミングを誤れば、消費者からそっぽを向かれる可能性がある。ある日突然、何の脈絡もなく原価を公開する。そんな企業があった時、あなたはどう思うだろうか。多くの方が、何かしら勘ぐってしまうだろう。突然企業イメージを変えることは難しい。新たに立ち上がった企業やブランドでなければ、よほど明確な企業メッセージとともに原価を公開しなければ、逆効果となりかねない。もし興味がある方は、ためしに「○○ 原価 公開」などとGoogle検索してみるといい。信頼できるページと、そうでないページは、不思議なほど一目で判別できるはずだ。

次に、古い業界であればあるほど、有形無形の「圧力」を受けるリスクがある。利害関係者や介在する企業が増えれば増えるほど、原価の公開には困難を伴う。Everlaneはいわゆる「D2C」(Direct to Consumer)のスタイルをとる企業だ。商品の開発から販売までを、自社だけで完結させているため、利害関係者が比較的少ない。2011年に生まれた企業という新しいイメージもあり、原価の公開を成長に結びつけることのできた、貴重な成功例と言えよう。
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このようにハードルが高い側面もあるが、個人的にこの「透明化」は、先行者メリットがあまりにも大きいスタイルだと感じる。その恩恵を受けられるのは、各業界の「先着1企業様」だけ。「第2のEverlane」を目指すのであれば、残された時間は少ないのかもしれない。

連載:世界を歩いて見つけたマーケティングのヒント
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文・写真=田中森士

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