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岩岡ひとみのBeauty & Society

(BSIP/UIG /by Getty Images)

イギリスロンドン南東部に広がるケント州、ロイヤル・タンブリッジ・ウェルズを訪れたのは2009年のこと。

内閣府の「青年社会活動コアリーダー育成プログラム」という事業で高齢者分野の派遣団員として「生きがいのある高齢者の生活」をテーマにイギリスを訪問した。

郊外の静かな田舎町のデイサービスで、介護スタッフに支えられて送迎車から降りてくる1人の要介護高齢者。おそらく80代だろう。私は彼女の足元を見て、驚きを隠せなかった。

その人は、「ハイヒール」を履いていた。杖をつきながら、優雅に室内に入っていく高齢者がピカピカのハイヒールを履いている。その姿に見とれていた私に、現地の介護スタッフが「どうしたの?」と声をかけてくれた。そこで私は素直に疑問をぶつけた。

「あの状態でハイヒールは危ないんじゃないの?」

すると、「確かに危ないかもね、日本ではお年寄りはどんな靴を履いているの?」と、屈託のない笑顔で返された。

大きなマジックテープと滑り止めがついた布製の介護シューズを履いている高齢者しか見たことがなかった私は、「そうね、とっても安全で、とってもダサい靴を履いている。というか履かされているわ」と苦笑しながら答えた。

この後も、高齢者施設の視察は、驚きの連続だった。

ほとんどのお年寄りは綺麗にメイクをしており、髪もきちんとブローされていて、鮮やかな口紅をつけて生活をしていた。

入居者たちは陶器の素敵なティーカップ&ソーサーで紅茶を飲んでいる。日本だとほとんどはプラスティックの食器だ。おそらく全員70歳以上で、認知症らしき方々も混ざっていた。しかし彼らは楽しそうにパーティーの相談をしていて、フィッシュ&チップスのケータリングをインターネット検索していた。

ここは、特に高級な有料老人ホームというわけではなく、ごく一般的な施設である。

日本のサービスや商品が、世界中の高齢者の笑顔を生み出していく

それから10年、NPO活動を続ける中で10万人以上の高齢者に美容サービスを提供してきたが、日本の介護施設では、ハイヒールを履いたお年寄りにはまだ出会えていない。

2008年から10年間、企業のサポートを受けて介護施設でのおしゃれイベント「ビューティーキャラバン」を継続してきた。

このイベントで、これまでに述べ800人以上の高齢者を変身させ、プロカメラマンと写真撮影をしてきた。最高齢の参加者は101歳だ。

文=岩岡ひとみ

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