一言で障害といっても、生きにくさは人それぞれ
例えば、発達障害は医学的には脳機能の障害と言われており、円滑に「コミュニケーション」をとったり、「ミス」なく作業をしたりすることなどに難しさを感じ、成長するにつれ自分自身の持つ苦手な部分に気づき、生きにくさを感じることが多い。
だが、発達障害の特性を本人や家族・周囲の人たちが深く理解をし、その人にあったやり方で日常的な暮らしや学校や職場での過ごし方を工夫することが出来れば、障害の有無に関わらず、持っている本来の力がしっかり生かされるようになる。
私が事務局長を務める福祉理美容のNPOは、医療や介護福祉の専門家とともにこれまで、特例子会社(※)・特別支援学校・障害者就労支援移行事業所・社会福祉協議会などで、知的・発達障害を持つ方を対象として、100回以上の「身だしなみ講座」を開催してきた。
※特例子会社とは、主に大企業が設立経営する子会社のことで、障害者のための特別な配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、その子会社に雇用されている障害者を親会社や企業グループ全体で雇用されているものとして算定できる。
障害を持つスタッフが子会社の社員として、社内で郵便物の仕分けや清掃をしている場合、役員ですらどのような仕組みで雇用されているかも知らないという事も多い。
障害者雇用促進のためには、社員一人ひとりの意識変容が重要であり、ともに働く障害者に対して、合理的配慮ができるように、まずは障害について知る・理解する必要がある。
「身だしなみ講座」に参加したある保険会社の社員は、アシスタントとして、知的障害を持つ若者たちに「ひげそり」など日常整容を教えた。手を取って、触れ合って教えることで、彼らが持つ「苦手さ」「困難さ」に気づき、その上で「接し方、教え方」「わかりやすく伝えるための言葉の選び方」などを学びとることができる。
この社員は、これから職場で障害者と共に働く際、接し方や声かけが変わっていくに違いない。これがまさに障害者雇用促進法が掲げる「合理的配慮」の本質だ。法律に従うだけ、ハードを整えるだけでは解決しないのだ。