障害者の働き方改革。その第一歩は、彼らの「生きにくさ」を理解することから

障害者の身だしなみ講座 写真=岩岡ひとみ

2018年4月に「障害者雇用促進法」が改正され、企業に求められる障害者の雇用率が引き上げられた。

内閣府が発表している「平成30年版障害者白書」によると、国民のおよそ7.4%が何らかの障害を有していることになる。障害者法定雇用率とは、障害者を持っている方は一般の労働者に比べ正社員として働ける機会が極端に乏しいため、不平等をなくすために設定されたものだ。現在従業員を46人以上雇用している企業は1人以上、従業員数に応じて、2.2%以上障害者を雇用しなければならない。

しかし、現実には対象となる企業で雇用率を達成しているのは、まだ半数程度だ。未達成の場合、国は民間業者に、不足する障害者一人につき原則月5万円の納付金を義務付けている。

そんな折、同年8月全国に激震が走った。「障害者雇用水増し問題」だ。

中央省庁の8割にあたる行政機関で、あわせて3460人の障害者雇用が水増しされていた。民間企業に雇用率アップを働きかけ、本来ならば自ら率先して雇用しなければいけない行政側が、障害者雇用に対して真剣に取り組んでいないということが明らかになった。

また、雇用が成立しても、コミュニケーション不足などから、障害者側も雇用者側も悩みを深めているケースも多い。

私たちの多くはこれまで、学校や職場で障害を持つ人たちとともに学んだり、働いたりする経験がほとんどない。そんな状態のまま、社内で急に障害者雇用が進んでいくと何が起こるか。

障害者雇用促進法では、「障害者に対する差別の禁止」として障害者であることを理由に不当な差別的取扱いをしてはならないとし、「障害者に対する合理的配慮」として障害の特性に配慮した、施設整備、援助者の配置などの必要な措置を講じなければならないと定められているが、「障害者に対する差別の禁止」「合理的配慮」と言われても、職場で具体的にどのように対応すればよいのかよくわからないので、なるべく関わらないようにしてしまうのが現状だろう。

障害を持つ人たちと直接関わる役職の人だけが障害者雇用について考える状態で、社内での理解は広がらない。当事者と担当者の悩みは深くなる一方だ。
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文=岩岡ひとみ

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