科学的な知識なくビーガン奨励 インフルエンサーがもたらす危険

Elena Eryomenko / shutterstock.com


長期的にビーガンの食生活を送る人が健康問題を経験する原因は、ビーガンの食生活を通して得にくい必須栄養素がいくつか存在することにある。ビタミンB12は通常の脳機能や神経機能の鍵となる栄養素で、動物性食品に豊富に含まれている。ビーガンの食生活を実践する人の場合、ビタミンB12は補充・添加しなければほぼ全く摂取できない。

また、必須脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)は魚や藻類からしか摂取できず、ビーガンの人が十分に確保するにはサプリメントが必要だ。カルシウムや鉄分、ヨウ素も懸念事項となる。ベルギーの王立医学アカデミーはこうしたリスクのため、子どもや10代の若者、妊娠中の女性や授乳中の母親はビーガンの食生活を実践すべきでないと警告している。

ビーガンから普通の食生活に戻したインフルエンサーらは、(主に知識不足が原因で)こうした教育を提供しておらず、自分の影響でビーガンになった数百万人のフォロワーの健康に何ら責任を負っていない。医療従事者が欠乏症のリスクを抱える人に善意からアドバイスをしようとした場合には、相手から非常に攻撃的な反応を受けることもあるため、こうした人へのアプローチについてはいまだに課題が残っている。

ビーガンに関連した栄養不足の初期症状は?

ビーガンに関連した栄養不足の初期症状には、疲労、睡眠不足、頭がぼんやりすることや集中力不足、(女性の場合は)生理周期の変化などがある。その後、肌や髪質が変化することが多く、気分の変化や妄想症のような心の健康状態のさらなる悪化が見られることもある。

初期症状はビタミンやミネラル、必須脂肪酸(藻オイル)を補うことで解決できるかもしれないが、深刻な欠乏症を防ぐためには医師や栄養士に相談することが強く推奨される。また大半の人にとっては、自分を軽蔑したり恥ずかしく思ったりすることなく動物性食品を口にすることを許す日を1週間に1~2日設け、よりリラックスした姿勢でビーガンの食生活を実践することが役に立つだろう。あるいは、新たに確立されたビーガン食品市場が栄養不足解消のため介入すべきだ。

典型的な「西洋の食生活」が米国民に悪影響を与えていることを強調するのは重要だが、動物性食品を排除しても健康に影響が出ないとする考えは正しくない。この点については長年かけて医学的に証明されているにもかかわらず、新たにビーガンになった人の精神的・身体的な苦しみを持ってこのことが証明されなければならなかったのは残念なことだ。

登録・規制された医療従事者には、安全で栄養学的に正しいアドバイスを提供する義務がある。栄養学は複雑な医療科学で、インフルエンサーがどれほど強い信念を持っていたとしても意見と混同すべきではない。

翻訳・編集=出田静

ForbesBrandVoice

人気記事