科学的な知識なくビーガン奨励 インフルエンサーがもたらす危険

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英慈善団体のビーガン協会(The Vegan Society)によると、英国におけるビーガン(動物由来の食品を全く口にしない完全菜食主義者)の数は、2014年から18年の間に4倍になった。

2014年の『Cowspiracy』(邦題『Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』)や2017年の『What the Health』(邦題『健康って何?』)などの衝撃的なドキュメンタリー番組がビーガンへの転向を促しているとされることが多いが、アリアナ・グランデやベネディクト・カンバーバッチらセレブのビーガン推進活動の影響も大きい。

またセレブだけでなく、ビーガンのインフルエンサーも完全菜食主義の普及において大きな役割を果たし、数百万人にビーガンへの転向を促してきた。多くの人は、ビーガンになることで動物の苦しみを緩和し環境に変化を起こしたいと考え、見事な結束を示してきた。

きちんとした知識と計画を持ち栄養素を補充すれば、ビーガンの食生活を実践しても多くの人は健康でいられることが分かっている。しかし多くのインフルエンサーは、ビーガンに関して広く認識されている栄養リスクをごまかすか、最悪の場合否定してきた。こうしたリスクが無視されたことで、ビーガンになった多くの人が欠乏症の症状を緩和すべく再び肉を食べざるを得なくなってしまったのは全く予想できたことだ。

再び肉を食べるようになったインフルエンサー

ユーチューバーのティム・シーフやヨバナ・メンドーサは、ビーガンの食生活を早いうちから実践していた擁護者だったが、最近再び肉を食べるようになったと明かした。(メンドーサは、130万人のフォロワーにビーガン食事計画を売り込む傍ら魚を食べていたところを目撃されている)

シーフとメンドーサはどちらも、再び動物性食品を食べるようになったことで消化の問題や頭がぼんやりする問題の解消、エネルギー向上、睡眠の改善、生理の問題の解消(メンドーサの場合)など、大きな健康効果があったと認めている。

こうしたインフルエンサーに対しビーガン界からは激しい反発が寄せられ、おそらくショッキングなことだったろう。また医学界からの同情の声が少ないことについては、ビーガンの食生活がフォロワーの健康に与え得るリスクと影響に関して警鐘を鳴らしていた医療従事者をインフルエンサーらが率先してののしっていたことを考えれば理解できることだ。

ビーガンの食生活を早いうちから擁護していたエレン・デジェネレスやアン・ハサウェイら多くのセレブも再び肉を食べるようになっている。ハサウェイは、サーモンを一切れ食べた後に「脳がまるで再起動したコンピューターのように感じた」と語っている。
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翻訳・編集=出田静

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