コンテンツごとに映像や音声を認識し、常に最適な画質や音質を提供する未来型のテレビ。これだけならば、従来と同じ「最新技術で美しい映像を映し出すテレビ」だ。しかし、LGエレクトロニクスの最先端技術を駆使した有機ELテレビは、心臓部ともいえる映像エンジンにAIを統合している点が大きな特長である。スマート家電とも連携し、視聴者の環境や好みを知り尽くし、おすすめの情報の提供や、自然に会話を交わすような音声認識も可能だ。こうしたAI技術の進化は、未来社会にどのような変化をもたらすのか。慶應義塾大学大学院教授・岸博幸氏に話を聞いた。
LGエレクトロニクスの最新技術を搭載した有機ELテレビを前に、「今年から来年にかけて、テレビの再定義の時代になってくると思うんです」と期待を込めて岸は語る。
家族が集まるリビングルーム、その中心にテレビがある──かつて日本のどの家庭でも見られた光景だ。しかし『若者のテレビ離れ』が叫ばれるように、家庭の中心にあったテレビの立ち位置も揺らぎつつあるのではないか。そう疑問を投げかけると岸は冷静に分析する。
「日本では、多くの人々が『ながら視聴』としてテレビをつけたまま過ごしています。朝起きたら出かけるまでテレビはつけっぱなし。家庭の中心という立ち位置は変わらないと思います」
情報収集やエンターテイメントの役割は、スマホやパソコンにも分散していく中、LG独自のAIプラットフォーム「ThinQ AI」はテレビを家庭の中心へと復活させる鍵を握っている。
「Google アシスタント」や「Amazon Alexa」を本体に搭載し、複雑なリモコン操作をしなくても自然な会話で音声認識を実現。さまざまなリクエストに幅広く対応する。こうしたLGのAI技術がもたらす恩恵として特筆すべきは、家電のネットワーク化だ。岸は、私たちと家電ネットワークをつなぐハブとなるAIアシスタントの形状(インターフェイス)に注目する。
「家電ネットワークにおいて重要なのは、利用時のインターフェイスです。人間がどういう風にネットワークへ接するのか、そして今後どんなインターフェイスが選ばれていくのか。その手段はスマホかもしれないし、AIアシスタントかもしれません。今後、こうした家電ネットワークの役割をLGの有機ELテレビのようにテレビが担えば、家庭の中心にテレビがある構図は変わらないのではないでしょうか」
テレビが家電ネットワークの入り口として、LGのホームダッシュボードのように家電の操作をはじめとしたシステム全てをコントロールできるようになる。その現象を岸は「テレビの再定義」と評した。
「今年から来年にかけて、テレビの再定義の時代になってくると思うんです。ネットワーク化した家電の中心に、高画質・高音質で大画面のLGの有機ELテレビがやってくる。それは従来の、家庭の中心にテレビがある構造と非常に親和性があります」
それは、スマート家電がますます人間の生活空間に溶け込み、テクノロジーと人間が一体化する未来を想起させる。岸はあくまで「それはどう進化するか、現段階ではまだわからない」と言うが、AI技術の向上に大きな期待を込めて、こう語る。
「AIを筆頭にした第4次産業革命によって、ビジネスと生活両面において、従来の非効率なやり方が、予想以上の形で変わっていきます。デジタル化という言葉はビジネス面で語られることが多いですが、家庭というプライベート空間においても、様々な不便さをすべてAIが解消し、想像できなかったような快適な時を過ごせる時代が近づいていると感じます」
人間の本能を呼び起こす、テレビ体験がやってくるLGの「ThinQ AI」が最適に補正した、大地の地響きやスタジアムの熱気など臨場感あふれる画質や音質を体感した岸は少なからず「テレビで、ここまで再現できるんですね」と衝撃を受けたようだ。これまでは見る人が映像や音声が満足いかなくても、テレビに最上級のクオリティを求めることはそれほどなかった。しかし誰しも自分が愛するコンテンツを最も快適な環境で楽しみたいはずである。そうした欲求を、岸は「人間の本能」と呼んだ。
「人間は絶対、自分が好きなものは大きな画面で見たいんです。動画配信サービスの台頭により、スマホやパソコンで視聴する習慣が根付きつつありますが、映画館に足を運ぶ人は絶えないし、話題の新作映画の興行成績は衰えていません。それはみんな、大好きな作品を大画面の高音質な環境で見たいから。ですからこれだけ動画配信サービスが盛んな時代でも、映画ビジネスは回っているわけで。パソコンやスマホの画面では味わえない臨場感を提供し、人間の本能を満足させるという観点からみると、LGの有機ELテレビはAIをすごくうまくテレビに活用している印象です」
岸は「映画館からすれば、こうした高画質大画面のテレビの方が脅威かもしれませんね」と言う。
大好きな作品を最適な環境で楽しみたいという本能は日本だけでなく、世界各国でも同じこと。岸はアメリカを例に挙げて話を続けた。
「大事なイベントや自分が好きなコンテンツほど、大きな画面で見たいはず。アメリカの若者も日本同様にスマホばかり見ていますが、年に一度開催されるアメリカンフットボールの祭典、スーパーボウルのテレビ視聴者数は、毎年1億人近くいます。ネット全盛期の時代になっても、スーパーボウルのような一大イベントは『大画面で見たい』という傾向が明確にあるのです」
その現象を日本に置き換えて考えたとき、来年に控えた一大イベントを、誰もが思い浮かべるのではないだろうか。
「2020年は日本にとって大きなターニングポイントになるんじゃないかと思います。大イベントは、LGの有機ELテレビのような非常に綺麗で大きな画面で見たいという、人間として当たり前の欲望が出てくるはず。そして一度それを体験したら、後戻りはできないと思うんです。現在、スマホが他のさまざまな技術より先行しすぎて、多くの人はスマホの小さな画面で満足してしまっていて、大画面でコンテンツを楽しむ喜びを忘れてしまっている。おそらく大イベントを綺麗な大画面で見るという体験が、人間がもつ当たり前の欲望を思い出させてくれる大事なきっかけになるんじゃないかと思うんですよね」
LGの有機ELテレビは、AIが映像コンテンツに応じて音質を最適化するから臨場感あふれるサウンドを大画面で楽しめるので、大イベントを家でも十分に鑑賞できる。テレビの前に人びとが集まり固唾を飲んで大画面を見つめ、歓声を上げる──こうした光景が、LGの最新技術により、さらに進化するかもしれない。そういう意味では、LGの有機ELテレビは「わくわくするような未来への期待」を感じさせるプロダクトだといえるだろう。
岸博幸◎慶應義塾大学教授/経済評論家。一橋大学経済学部卒業、コロンビア大学ビジネススクール卒業。1986年通商産業省(現経済産業省)に入省し、産業政策、IT政策、通商政策、エネルギー政策などを担当。経済財政政策担当大臣、総務大臣などの政務秘書官を歴任し、不良債権処理、郵政民営化などの構造改革を主導。エイベックス取締役、ポリシーウォッチ・ジャパン取締役などを兼任。