「個人が記号で規定されず、ベストを尽くせるように」──メルカリ流、D&I施策の舞台裏

メルカリ版「Pride」ステッカー


プロジェクトの立ち上げから約3カ月後。2018年の夏には、「#z-diversity」の活動が経営陣にまで届き、会社の正式なプロジェクトとして認められた。

「プロジェクトが正式化するにあたっては、時期的な要因も大きかったと考えます。昨年10月には外国籍の新卒メンバーが約50名入社する予定でした。その前にできることをやろう、ということで夏頃、プロジェクトの正式化につながっていきました」(鈴木)

今年の2月にはD&Iが部署として正式に立ち上がり、今はボランティアではなくフルタイムでD&Iにコミットするメンバーもいるようになった。今回、ステートメントを考えるにあたって、鈴木は「ボトムアップで構築し、トップダウンで支援すること」「数値目標は持たず、ポジティブアクションにフォーカスすること」「個人の多様性を尊重し、グループ化などは行わないこと」の3つの意識したという。

「メルカリ流D&I」を発信し、社会全体に波及させていく

「D&Iの取り組みを行うにあたって、アドホック(特定の目的のため)で催しをするのではなく、安定して多様な価値観を受け入れる『風土』を作ることが重要です。ディスカッションに時間がかかったとしても、それはマイナスではありません。一方で、自分のアイデンティティと価値観に向き合うことが大切です。D&Iは『全員一緒になりましょう』ではなく『(相容れない部分があったとしても)理解しましょう』というもの。多様性を保つためには、自分の軸を持ち、意見を出していくことが必要です」(鈴木)

そのほか、D&Iに関連するワークショップに参加し、社内での推進方法を考えるところから始めたり、「アライ(支援者)」になりD&I活動を行うメンバーをサポートして称えたりすることもD&Iの推進に繋がっていく、と鈴木は言う。


2019年3月の国際女性デーに合わせて社内で開催された「International Women’s Day Lunch」

ボランティアとしてD&Iを立ち上げてから、1年が経過。6月に開催された全体定例では、メルカリUSのCEOジョン・ラーゲリンが「D&I推進について」というプレゼンテーションをするなど、経営層のアクションも積極的になっている。今後のD&Iの取り組みについて、鈴木は最後にこう語った。

「個人的には、誰しもが、どこかにマイノリティを抱えている“当事者”だと思います。自分が働きやすい環境にする、そういう思いでD&Iを推進してもらえたら、と思います。将来的には、メンバー全員がD&Iに対して何らかのアクションを取っている、という状況にしたいです。自由にキャリア形成ができるメルカリにして、将来的にはファクトブックのような形で『メルカリ流D&I』を発信し、社会全体に波及させていきたいと考えています」(鈴木)

文=新國翔大、写真=メルカリ提供

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