ただ、(3)の「年金制度は万全」ついては、直ちに「黄信号」が点灯しそうだ。これも株価と関係がある。安倍政権は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用資金を株式市場に投入し、株価の上昇を図った。が、GPIFやETFの買い支えにもかかわらず、このところの株価は下落傾向にある。
GPIFの2018年度第3四半期運用実績は-14兆8039億円、収益率-9.06%と、前年同期の 6兆549億円、同3.92%を大きく下回っている。さらに株価が暴落するようなことがあれば、年金資金は壊滅的な打撃を受ける。参院選でも株価下落に伴うGPIFの運用成績悪化は争点になりかねない。「年金が危ない」は、国民に強い危機感を与えるからだ。
すべての不可解な現象を検証してみれば、真実が浮かび上がってくる。安倍政権の経済政策を最大限にアピールする株価上昇は、年金資金をはじめとする公的資金の投入による「官製相場」であり、市場原理から逸脱した株価維持が限界に近付いていること。
そうした官製相場を「延命」するために、なんとしても国民の金融資産を株式市場に誘導しなくてはいけないこと。そのために国民の関心が高い年金を「ダシ」に使わざるを得なかったことだ。
「年金2000万円不足」騒動で最も怖いのは年金ではなく株価の崩壊(Photo by Ahmad Ardity)
こうした真実から透けて見えるのは、国内株式市場の暴落の予感である。米中経済摩擦の激化による世界経済の冷え込みや米国側からの対日貿易圧力強化の懸念などで、株価は公的資金の大量投入が止まればたちまち暴落する可能性が高い。「年金2000万円不足」騒動で最も怖いのは世間が大騒ぎしている「老後の生活不安」ではなく、間近に迫りつつある官製相場で支えられてきた国内株式市場の大混乱なのだ。
それにしても、政権の意向を受けて(あるいは忖度で)報告書案を提出しながら、所管の麻生大臣に受け取りを拒否され、与党から「配慮がない」と集中砲火を浴びた金融庁は立つ瀬がない。森友・加計事件で忖度した官僚たちは野党からは厳しく非難されたものの、それなりの厚遇を受けた。しかし、今回の報告書案に関与した金融庁幹部たちは、参院選が与党の敗北に終われば詰め腹を切らされるのは必至。なんとも「割に合わない話」である。
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