ビジネス

2019.06.28

アートを「本気」でビジネスに──日本の美の価値を世界のスタンダードへ

初めてのForbes CAREER主催イベント


アートビジネスの可能性

アート市場の現状を少しばかり掴んだところで、事業を運営する2人にいかにビジネスとして成立させるかという点について尋ねた。「日本のアートを本気でビジネスにするということをテーマの本題としているんですが、アートビジネスにはどのようなビジネスモデルが存在しているのでしょうか」(後藤)

「アート市場は贋作(買い手を騙す意図で流通するオリジナルとは異なる模作や模写)が度々問題になったり、販売後にも価値付けが丁寧に行われる必要があるため、信頼できる人に売りたいというインセンティブが働きます。そのような意味において現状のマーケットが閉鎖的になることは仕方がない面もあると思います」と施井氏は今のアートビジネスを説明する。

「今作っているアートブロックチェーンネットワークはブロックチェーンの特性を活かし、仮に僕たちの会社がなくなったとしても未来に残るように設計しています。これまでアーティストやマネージメント機関が各々で独自のフォーマットで作ってきた作品証明書がブロックチェーン上で管理されることによって改ざんの防止もさることながら、信頼性が向上したり、二次流通の管理なんかもできるようになります」

アーティストの父を持つ石上氏は、幼少時代、月末になると家に1000円があるかどうかという、苦しい生活を経験したことを共有しながら、「後世の人が作品を再評価することも多いが、今生きているアーティストを支える体制を作ること」の大切さをオーディエンスに説いた。

「長期的なロマンで、宇宙みたいに繋がっていることをこの事業で表したいんです。作品の歴史は、有名な絵だとしても最初の評価者、購入者は近所に住んでいたおばちゃんから始まってるかもしれないわけです。でもこの小さなつながりは記録されていないからわからない。だからこの新しいアートプラットフォームによって、美の繊維を可視化したビジネスモデルを作っていきたいと思っています」

(施井泰平氏)

事業の成功例は西洋にあり。日本の美とは

イベントも終盤。イベント応募者からの質問を編集部がピックアップし、会場参加者に投票してもらうシステムを実施し、3つの質問が選ばれた。

──世界のアート業界ではどのような事業モデルが成功しているのか?

「2大オークションであるサザビーズとかクリスティーズが250年ほど前からアートビジネスにおける寡占市場を作っていますね。2012年にニューヨークで設立されたArtsyというスタートアップはこれまでに100億近くの資金調達をし、ギャラリーのポータルサイトのようなサービスを行うアート系ウェブサービスの成功例として注目されています」(施井氏)
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文=猪俣由香 写真=曽川拓哉

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