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2019.06.27

ネトフリの「型破りなコンテンツ制作論」 日本の実写作品でも発揮

Netflix Japanコンテンツ・アクイジション部門ディレクターの坂本和隆


過去の取材で、ネットフリックスCCO(コンテンツ最高責任者)のテッド・サランドスはコンテンツ制作における“こだわり”について、こう語っていた。

「良いコンテンツを制作するためには、きちんとしたクリエイターを選ぶことが大切です。良い人選を行えれば、コンテンツの細かな部分はクリエイターに任せて、私たちは彼らを楽しませる存在でいればいい。だからこそ、私たちは各地域のクリエイターに投資し、自由にコンテンツを創り出してもらっています」と。

そのこだわりは日本でも存分に活かされている。園子温や蜷川実花は、言わずと知れた日本を代表する映画監督。彼らがネットフリックスで完全オリジナルの作品を撮る、というのは、日本のコンテンツ制作現場においてエポックメイキングな出来事と言える。『愛なき森で叫べ』と『FOLLOWERS』も2人のアイデアをもとにストーリーが作られていった。

「今回発表した3作品はすべてクリエイター発信によるもので、彼らがドライブしていった企画です。日本のコンテンツ制作の現場において、なかなかオリジナルストーリーを作るのが難しいと言われている中で、自由度の高いコンテンツが集まっている。これはネットフリックスならではの特徴と言えるでしょう」(坂本)



ハラスメント研修、海外脚本家との話し合いに「驚く」

こうしたネットフリックスの“クリエイティブ・フリーダム”と言われるコンテンツづくりに何より驚いていたのが、80年代の日本を舞台に伝説のAV監督・村西とおるの半生を描いた『全裸監督』の監督を務めた武正晴だ。


『全裸監督』の監督を務めた武正晴

「オリジナル作品祭」の“クリエイターズセッション”に登壇した武は、「撮影前にハラスメント研修があったり、海外の脚本家と一緒に脚本の話をしたり、撮影にとにかく時間をかけたり……。こんな作り方をしたのは初めてですが、すごく作品づくりに臨みやすかった。これを一度体験してしまったら、もうネットフリックスでの制作をやめられなくなる」と語った。

ネットフリックスが制作するオリジナル作品については、全世界で事前にスタッフ、キャスト全員を対象にハラスメント研修を実施。それを踏まえた上で、物語の面白さが伝わる演出を行っていった。

「ハラスメント研修をして、どうやってAV業界の演出をすればいいんだ(笑)と思ったのですが、ネットフリックスからは『リスペクトの気持ちを持ちましょう』と言われ、相手に対してリスペクトの気持ちを持ちながら撮影を行っていきました」(武)

完成版は観れていないが、山田孝之、満島真之介、玉山鉄二ら出演キャストの話によれば、山田孝之はカメラを持ちながら濡れ場に臨み、玉山鉄二は自慰行為もしたという。


撮影の舞台裏について話す山田孝之と玉山鉄二

またオーディションを勝ち抜き、AV女優・黒木香役を演じた森田望智は実際に喘ぎ声を出しながら、濡れ場の撮影に臨んだ。「最初はAVの撮影シーンが本当に嫌で、みんなインフルエンザになって延期にならないかなと思っていたのですが、武監督がリハーサルでお手本見せてくれる姿を見て、私は何を恥ずかしがっていたんだろうと思い、そこから振り切って撮影に臨むことができました」と振り返る。
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文=新國翔大

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