定年で名刺も居場所もなくなった時、どうやって人生を輝かせるか

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地域の居場所づくり

現役時代には地域との関係性が希薄だった企業人(特に男性)は、定年後の地域の居場所づくりがとても重要になる。それが名刺に替わる自らのアイデンティティになるのだが、その形成は思うほど簡単なことではない。

定年後の人を対象とした講演会でよく聞かれる声は、『朝起きてもすることがない、行く所がない』という単純だが切実な悩みだ。高齢期を元気に過ごすためには、『きょうよう』と『きょういく』が大事だと言われる。今日の用事(きょうよう)と今日行く所(きょういく)との意味だ。定年後に自宅に閉じこもることのないよう地域の居場所づくりが求められる。

定年後の地域の居場所づくりを成功させるには、ちょっとしたコツが必要だ。過去の経験やスキルを大事にしながらもそれらにとらわれ過ぎないこと。また、地域住民には多様な価値観があり、たとえ相容れない場合も頭を柔軟にして聞き上手になることだ。自慢話をしない、見栄を張らない、年長風を吹かさないなどを心掛けていると、徐々に地域社会に人の輪が広がる。

定年後も輝く人生を

定年とは社会から退出することではなく、これまで仕事を通じて築いてきた社会との関係性を新たに個人として再構築する機会だ。経済的理由で高齢になっても働かざるを得ない社会は望ましいとは言えないが、いつまでも自己の能力を活かしながら年齢に制約されずに活躍できることは、日本社会にとっても人生100年時代を生きる高齢者にとっても幸せなことだ。

このような社会を実現するために、ヒエラルキー型の企業社会だけではなく、フラット型の地域社会の働き方を現役時代から身につけることが必要だ。少子高齢化が進展した長寿社会では、退職者の役割はきわめて大きい。定年後は「会社」のためから「社会」のために自己を活かすことが一層重要になるだろう。

現役時代に企業で光り輝いた企業人が、定年後も楽しく生き生きと暮らすためにはますます地域の居場所が重要になる。幅広い仲間とのネットワークをつくり、定年後も地域社会で光り輝く人生を送りたいものである。

連載:人生100年時代のライフマネジメント
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文=土堤内昭雄

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