モータージャーナリストが斬る ママチャリ問題の「グレーゾーン」 

日本の道、そして街を30年以上も見守ってきたモータージャーナリスト、ピーター・ライオンのクルマにまつわるすべてを取り上げる注目の新連載。初回は、異邦人の瞳に映った日本の“グレーゾーン”。


アルコールをいっさい飲んではいけない、という道路交通法の酒気帯び運転ルールは世界的にも厳しい法律だ。

ところが、日本には法律的に曖昧な面があるというか、色々と“グレーゾーン”が存在することをご存知だろうか?

日本は法的に厳しい国だと思われがちだが、実際は「ザル」なところも少なくない。筆者はモータージャーナリストとして30年以上日本に住んでおり、交通事情にも多くのグレーゾーンがあることを知っている。例えば、高速道路の法定速度の守り方にせよ、後部座席のシートベルトの着用率にせよ、取り締まりが徹底されていないのである。

日本の高速道路を法定速度20kmオーバーで走行しても、ほとんどの場所でオービスが光らない。その点、母国のオーストラリアでは3kmオーバーですぐに捕まる。私も昨年一時里帰りした際、4kmオーバーで“ネズミ捕り”に引っかかった。日本の警察は、着用義務がある後部座席のシートベルトもほとんどチェックしない。助手席でお母さんが赤ちゃんを抱っこしていてもほぼ無視。多くの国では車内の全員がシートベルトを着用していなければ、すぐに捕まって罰金刑のうえ、運転免許に違反点数が付与される。

ママチャリの乗り方も色々な意味でおかしくて曖昧だ。ふつうの自転車に乗る子供でもヘルメットの着用が義務化されているのに、その数倍危険だとされるママチャリに乗る母親がヘルメットをかぶらなくていいなど、その最たる例だ。

「えっ、ママチャリが危ないの?」

そう思った読者諸賢もいることだろう。電動アシスト自転車は、それ自体の重量が約20kgに及ぶ。そこに体重50kgの母親と、合わせて25kg以上になる2人の子供、プラス荷物が乗れば総重量は「100kg近く」になる。これが時速25kmで走るところを想像してみてほしい。

にもかかわらず、そのブレーキは自動車の基準からいえば制動力不足だ。だから危なくてしようがない。

大切な子供を乗せているはず──。それなのに、お母さんたちはなぜそんなに暴走したがるのか。私にはさっぱり理解できない。見通しの悪い交差点でも無謀な走り方をするし、反対車線も平気で逆走する。私は毎日、こうした“カミカゼ・ママチャリ”を見かける。子供たちの安全についてもっと考えてほしい、そう心から願う。
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文=ピーター・ライオン

この記事は 「Forbes JAPAN 100年「情熱的に働き、学び続ける」時代」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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