超低予算映画に門戸を開く ストリーミングの勢いが止まらない

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映画の質が製作費に比例するようだったこの10年の映画づくりに比べ、「The Pastor and the Pro」という作品は、嘘のような低予算でも立派な映画がつくれることを証明した。

WSJは、その製作コストの詳細までも報じていて、キャスティングに30万円、マーケティングに20万円、スチール写真に13万円、音響に13万円と明らかにされると、なるほどと納得する。

面白いのは、サウンドトラックには、教会音楽を使うことで使用許諾料を無料にし、そうでない音楽は、ストックをためているネット会社から3万円で借りてきたという。さらに、主演などの7人の役者以外は、自分の家族や親戚を投入し、製作費を抑えたとあるし、ロケ場所もしかるべしだ。

もちろん、ただ安くつくるだけなら昔からできたのだが、高校生の映画研究会の制作ではなく、きちんと商業ベースに乗った、プロの映画でプロの配給というところが新しい。

日本映画も観賞されている

気になる収入のほうだが、アマゾンプライムとの契約は、1時間1人が視聴することでプロデューサーに6セントの収入が入るという。これまで9万人の視聴があったということで、約5400ドル(約58万円)の身入りとなり、100万円のコストの半分はすでに回収されている。

役者にとっても、劇場で上映する映画にこだわると、自分の出演機会を得たり、維持したりするのは大変だが、これからは、ストリーミングの世界でデビューしたり名を挙げたりすることで、将来への道も開かれている。

筆者は必要に迫られて、日本のアマゾンとアメリカのアマゾンと両方のプライム会員になっているが、アメリカのアマゾンプライムでも、このところの日本ブームで、たくさんの日本の映画が字幕によってアメリカ人に視聴されるようになっている。

もはや、アニメのセーラームーンやポケモン、エヴァンゲリオンだけではない。日本の意欲ある映像作家の作品が、ストリーミングによって、一気に海外で観られる日が来るのも近いかもしれない。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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