取材はカンヌライオンズ のオフィスにて、2回目のリハーサルまでの時間を練って行われた。
一流クリエイターの条件は大きく変わらずとも、カンヌライオンズ自体には、ビジネスの世界と同じようにトレンドがある。昨今では「ソーシャルグッド」が叫ばれていたが、誰よりもカンヌライオンズを知るフアンが予想する次なるトレンドはどのようなものなのだろうか?
「毎年みんなに次は何が流行るのか聞かれているのだけど(笑)、私は今後さらに、エンターテイメント性の高い広告が求められると思っています」
GoogleやFacebookの力が増すもともに、広告事業の可能性は代理店だけのものではなくなった。大企業になれば、内部に有能なクリエイターを抱えることで、代理店に頼ることなく広告出稿のできる仕組みを確立している。
これだけライバルの多くなった現代で勝ち残ることのできるのは、消費者を楽しませることができる広告を企業と作ることのできるクリエイターだけだ。
フアンが「エンターテイメントとしての広告」の成功例として挙げたのは、バーガーキングの「THE Whopper Detour Campaign(ザ ワッパー ディトワーキャンペーン)」だった。
「マクドナルド」の敷地内で、バーガーキングの定番商品「ワッパー」を1セントで購入できるアプリのクーポンを配布したキャンペーンは今年、ダイレクト部門、タイタニアム部門、モバイル部門のグランプリ3冠を果たした。
このキャンペーンは、消費者が金銭的に得をするだけではなく、人に驚きをもたらすエンターテイメント色の強い広告となった。そして、人を楽しませることがどれだけ難しいことかをクライアント企業、クリエイターたちに再認識させた。
最終日の授賞式で、「クリエイティブ・ブランド・オブ・ザ・イヤー」として表彰されたバーガーキングのクリエイターたちは、喜びのあまり舞台上でハグをしあったり、各々の iPhoneで撮影をしたりして、なかなか舞台から下りることができなかった。
その様子をフアンは、「落ち着いて。ただのクリエイティブ・ブランド・オブ・ザ・イヤーだから」と笑顔で冷静なコメントをして会場を沸かせた。
15年間、世界のトップクリエイターたちと最も近い位置で、カンヌライオンズの観客を楽しませてきたエンターテイナーでもあるフアンのトレンド予想は果たして、的中するだろうか。