「社会的であれ」NYのメディア理論家が今、世界に訴えたいこと

ダグラス・ラシュコフ(写真=OGATA)


──あなたは『Team Human』で、「ロボットが人間化するのではなく、人間がロボット化する」「IoT(モノのインターネット)で、人間がモノ化する」と書いています。人工知能(AI)やアルゴリズムが人間社会に引き起こす問題とは?

人々が何かをするためのテクノロジーが開発されているのではなくテクノロジーが主語になっていることが問題だ。人間を単なる「資源」とみなし、テクノロジーで行動を操り、価値を引き出す対象としてみるのは短絡的だ。人を破壊してしまう。

アルゴリズムは、私たちにデータの放出を迫ってくる。機械学習などを駆使し、人間の行動を予測・管理することがお金を生むからだ。フェイスブックもツイッターも麻薬さながらの威力を持ち、人の意識を操作するように設計されている。



──あなたのウェブサイトに、「システムの仕組みを知らないと、システムに利用される」という標語が載っています。

若者らは、フェイスブックを友人との交流のためのものだと思っているが、違う。彼らのソーシャルグラフ(相関図)を収益化するのが目的だ。アルゴリズムで彼らの行動を予測し、それを大企業に売って儲ける。若者らはユーザーでも顧客でもなく、「商品」なのだ。

スマートフォンは使われるたびにユーザーのデータを蓄積して賢くなるが、ユーザーはその逆だ。スマホが何をしているかさえわからない。各社の情報は(非公開で所有権のある)プロプライエタリ・アルゴリズムに守られているからだ。

人々が健全でかつ「社会的」でいるよりも、(自分の投稿に)誰がクリックしてくれるのか気をもみ、落ち込むような疑心暗鬼の状態にあるほうが、グーグルやフェイスブックにとっては、お金儲けになる。リツイートや「いいね!」をしたくなるような扇情的な投稿が歓迎されるのも、ソーシャルメディアのビジネスモデルゆえだ。

トランプ大統領にも同じことが言える。彼は多額の負債を抱え、実業家としては失敗したが、リアリティー番組の制作にかけては実に優秀なテレビプロデューサーだった。大成功した富豪を演じることで、まるで現実であるかのような錯覚を視聴者に抱かせた。「お前はクビだ!」と実業家志望の出演者に言い放ち、侮辱するなど、最も扇情的な仕掛けで視聴率を稼いだ。ソーシャルメディアと同じだ。

インタビュー後半は、Forbes JAPAN 2019年8月号(6月25日発売)をご覧ください。


ダグラス・ラシュコフ◎作家、メディア理論家、クイーンズカレッジ(CUNY)教授。ニューヨーク在住。著作に『サイベリア―デジタル・アンダーグラウンドの現在形』(アスキー刊)、『Team Human(チーム・ヒューマン─未邦訳)』など多数。

インタビュー=肥田美佐子 写真=OGATA

この記事は 「Forbes JAPAN 社会課題に挑む50の「切り札」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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