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異能集団が取り組む「謎の解明」

とはいえ、まだすべては始まったばかりだ。杉原は中長期的な戦略のもとで取り組む価値がある、と考えている。彼は自身の主観にもとづく投資判断を“勝ちパターン”という形で言語化し、それを「勝利のレシピ」としてまとめている。40数種あるその勝ちパターンは一つにつき、3〜7つの特徴量(数値化された特徴)があると推定される。特徴量を学習させ、それらパターンを実装したボットとの対話を通じてアナリストが事例を学ぶことだけが目的なら、杉原の思考を模した「スギロボ」のプロトタイプは現在でも開発可能だという。ちなみにスギロボという名前は、「なぜ?」という問いを繰り返し、徹底的に合理的かつデータ・ドリブンである杉原を、社員が「ロボットみたい」と評したことに由来する。

そして、スギロボを開発する過程で、「ある発見」に至ったのだ。ハヤテの投資行動とそのタイミングを中心に据えた定量データだけを分析してみたところ、一つの明晰なパターンが現れた。杉原は、投資判断を行う際は必ず定性と定量の両情報に触れる。つまり新聞を読み、会社訪問もし、財務数値や投資指標も確認する。それらが脳内で「ブレンドされて投資判断が形成される」のである。定性・定量情報が混然一体となってインプットされ、結果として脳が投資判断をアウトプットされるものの、しかし、そのアウトプットが定量情報だけで説明がついてしまう場合があるのだ。

「結局、人間はパターンの産物に過ぎないのか」

杉原はそう思ったと振り返る。もちろん、定量情報だけでは説明がつかないレシピも多々あった。それでも、やはり人を人たらしめる「パターン」はあるのだ。ひょっとすると、人間には根っこから書き込まれた“プログラム”のようなものがあるのかもしれない。審美眼やセンスといった感覚的な要素も人それぞれのはずなのに、大多数の人に受け入れられたりするものがこの世界にはある。

「でも、『黄金比なんて別に気にしない』という人もいますからね……」と、“スギロボ”が一瞬、戸惑いを見せる。だが、すぐもとに戻って目を輝かせた。

「すると、『それはなぜ?』と気になります。この世は解けない謎ばかりなので飽きないですよね」



杉原たちは黄金比を使って「幸せの効用関数」を最大化させられるのではないかと、上掲の「7 SIGMA PROJECTの未来」というグラフを書いてみた。同調圧力に振り回されず、自分の選択に自分が一番納得できる人生を誰もが歩めれば─。 そんな究極的な思いを彼らは描くのだった。


杉原行洋◎ハヤテインベストメント CEO(最高経営責任者)兼CIO(最高投資責任者)。東京大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社で株式トレーディング業務に従事。その後、国内資産運用会社を経てハヤテグループを創業。早稲田大学ビジネススクールで招聘講師も務める。2歳の頃から新明解辞典を持ち歩き、「あ」から順に読み進めるほどの「活字中毒」。好きなジャンルは推理小説で、「何冊かに一冊、予想を見事に裏切ってくれる本に出会った瞬間が自分にとってのカタルシス」と語る。

ハヤテインベストメント◎2005年創業の独立系オルタナティブ・アセット・マネジメント会社。主に、日本に上場する中小型企業(株式)を対象に資産運用をしている。06年以降の累積投資リターンは約+370%。東京のほか、シンガポールにもグループ法人が進出しており、創業時からグローバルに展開している。

文=井関庸介 写真=Shoko Takayasu

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