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現在のハヤテは日本国内の中小型株式を主な対象に、絶対収益追求型ファンドの代表的な投資戦略であるロング・ショート・アプローチを採用する従来型の資産運用会社だ。CIOとしての杉原の仕事は、アナリストが集めた延べ2万件以上の企業情報を、彼らと議論しながらまとめ、投資判断を下すことにある。同社は、アナリスト3人が年間一人1000社を目標に投資先候補の経営陣を取材する。大手証券会社と人数で圧倒的な差があることを除けば、この点に大きな違いはないだろう。

だが、いくつかの点がハヤテの急成長を促してきた。まずは、モノやサービスの流れに沿った“横串”の包括的なバリューチェーン分析を行う点だ。大手では業界担当者を固定し、領域ごとに専門性を深めていく。ハヤテの場合、業界の垣根を超えて調査を行う。そのため、最終製品が消費者の手元に届くまでの過程での情報の見落としが減る。情報の質も重要だ。同社のアナリストの一人は、常に「情報の『情報』(メタ情報)を意識する」と明かす。

「例えば、情報の鮮度ですね。同じ『良い情報』でも最初に聞くのと、10人目とでは違います」



次に、アナリストたちが得た情報と記録をもとに、杉原を交えて徹底的かつ濃密な議論が行われる。それも10年以上にわたり1日も欠かさず毎朝2時間も、である。議論の中で反対意見が出ても、それも投資行動に直結する貴重なデータだ。

可否に関係なく、杉原はその理由を「なぜ?」と容赦なく追及していく。その多くは元来の好奇心から生じる素朴な疑問なのだが、その徹底ぶりから「社員には嫌われている」と本人は苦笑する。

こうした横串の調査や、対話による「知の統合」が急成長の源泉になっている。

ただ順調な成長の一方で、ハヤテが「金融の枠を超えたポテンシャルを秘めているのでは」と考える人物がいた。経営企画本部に所属する安島真澄である。安島の前職はエグゼクティブコーチ。杉原らと働くうちに同社なら金融の枠を超えられる、と考えるようになっていた。ハヤテ創業から10数年。杉原自身も新たな目標を必要としていた。

そして、手元には杉原がアナリストたちと蓄積してきた膨大なデータがある。延べ2万件を超える企業情報、その分析にもとづいて行われた議論を記録したメモや音声データである。

この“宝の山”をハヤテの発展のために生かしつつ、世に還元する方法はないか─。そう考えた安島は同僚の木野憲人と共に医学や人工知能(AI)、統計学、数理生物学、複雑系など多分野の外部の専門家を社内に招き、ハヤテの未来について杉原とオープンに議論できる場を設けた。

文=井関庸介 写真=Shoko Takayasu

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