ビジネス

2019.06.25

アマゾンの商品お勧め機能「Amazon’s Choice」が抱える問題

Eric Broder Van Dyke / Shutterstock.com

ここ最近、アマゾン・ドット・コムで特定の商品に表示される「Amazon’s Choice」ラベルの気まぐれさと信頼性の低さを指摘する記事が相次いで出されている。このラベルは、理屈のうえではアマゾンが価値の高いと判断した商品を際立たせるために使われているとされるが、どうやら実際には、偏りがあり、簡単にだますことのできるアルゴリズムを使用しているのだという。

アマゾンには膨大な数の商品が出品されており、各企業はその中で目立とうと競い合い、ユーザーが「選択のパラドックス」に直面する場面が増えている。選択肢があふれる中、各カテゴリーで特定の商品を利用者に勧める役割を果たしているのが、Amazon’s Choiceだ。通常は、アマゾンの倉庫に在庫があり素早く配送できるものや、最もお得とされる商品がお勧めされる。

この評価は何らかのアルゴリズムに基づいて行われているが、アマゾンの説明では「すぐに発送ができて、評価が高く、お求めやすい価格の商品」としか記されていない。このラベルを決め手に商品を選ぶ人は多いが、他の商品と比較してみると、実はこの評価にほとんど意味はなく、その商品の価値が高いととらえるべきではないことが分かる。

アマゾンは今や、米国内の電子商取引の49%、小売販売の5%を担う巨大サイトだ。アマゾンは従来型店舗のビジネスモデルをまねて、スーパーマーケットが商品の製造元による広告や店内の特定スペース使用に料金を課すのと同様に、サイト上での広告枠販売を拡大している。

このアプローチの何が問題なのだろう? 一言で言えば、顧客からの信頼だ。特定の商品を探すためにアマゾンのページを開くと、そこは企業が枠を買い取った広告であふれており、商品の並び順も恣意的だ。利用者はアマゾンからのお勧めにはあまり意味がないことに気付き、数クリックで移動できる他のサイトの利用を決めてしまうだろう。

アマゾンの無責任で強引かつ持続不可能な税金対策について既に不満を持っている人は増えている。また、同社がディストピア的で不完全な顔認識技術を政府に販売していることに対する認識も高まっている。さらに、環境問題に対して全く無神経な姿勢への不満も高まっている。英紙デイリー・テレグラフが指摘したように、ジェフ・ベゾスの“中年の危機”はさまざまな面で地球に甚大な影響をもたらしうるのだ。

時価総額が4月に一時1兆ドル(約108兆円)を超えて世界1位となり、株価は2年後に3000ドル(約32万円)に達すると予想され、世界で最も価値のあるブランドともされるアマゾンにとって、こうした懸念は二の次に思えるかもしれない。しかし、顧客の信頼を失えば、そこには何も残らない。最近のアマゾンによるチョイス(選択)の多くは、顧客の信頼を裏切っているようだ。これらは疑いなく、アマゾンが間違った方向に向かっていることを示す非常に悪いチョイスだ。

編集=遠藤宗生

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