ビジネス

2019.06.27

ウーバーイーツはIPOを申請した親会社の「秘密兵器」となるか

ウーバーイーツ立ち上げに関わり、現UberEverythingの担当副社長であるジェイソン・ドローギ氏

女性差別問題に前CEOの解任、主要市場からの撤退……。“破壊者”だったウーバーが近年、守勢に回っている。
そんななか、同社の「デリバリーサービス」が成長している。IPOを申請した同社の“秘密兵器”になりえるか?


デリバリーサービスがもう一つの事業の柱になるかもしれない──。 2008年、投資家たちが米配車サービス「Uber(ウーバー)」からプレゼンテーションを受けていた。ただ配達事業の可能性については、最後から一つ前のスライドで触れる程度の扱いだった。

それから10年。「Uber Eats(ウーバーイーツ)」へ成長した同デリバリーサービスは、もはや“おまけ”などではない。

実際、業績は順調だ。ウーバーのダラ・コスロシャヒCEOによると、19年には世界各国で約100億ドル(約1兆1100億円)相当の食事を宅配する見込みで、これは前年比約60億ドル増である。ウーバーは飲食店から30%のコミッションと宅配料金を取り、残りをドライバーへ支払う。よって少なくとも、ウーバーイーツの19年の売り上げは10億ドルに上る。これはウーバー社の全事業の7〜10%に当たる。つまり、ウーバーイーツはすでに世界最大級のフードデリバリーサービスなのだ。

赤字続きのウーバーにとってはおいしい話だ。同社が18年8月に資金調達した際の企業価値は約760億ドル。銀行家らが期待するIPO(新規株公開)は今年予定されているが、実現すれば企業価値は約1200億ドルに跳ね上がる可能性がある(編集部註:4月11日にIPOを申請。5月上旬のニューヨーク証券取引所への上場を目指している)。

問題はウーバーの中核事業である配車サービスにそれだけの価値がない、ということだ。爆発的だった成長率は陰りを見せている。米国外のサービスも苦戦し、ウーバーは中国での事業を16年に地元のディディチューシン(滴滴出行)に売却。東南アジアのビジネスも手放している。

また同社の自動運転車ビジネスはかつて、上昇するドライバーのコストに対する解決策と考えられていた。ところが、18年に自動運転車が歩行者を撥ねる死亡事故を起こした。テストは中止され、関係部門の従業員も解雇することに。

そのウーバーがいま、投資家に「(競合の)リフトでなく、我が社の株を買うべき」とアピールしている。ウーバーイーツなら、その決め手になるかもしれないのだ。

「私がウーバーに加わった当初は、配車サービスに力を入れていて、イーツは実験的な取り組みにすぎなかった」と、17年にCEOに就任したコスロシャヒは話す。

「それ以降、イーツは爆発的に成長し、重要なビジネスの一つになりました」

とはいえ、ウーバーイーツはビジネスを拡大する一方で多額の損失を出し続けている。いつになったら黒字化できるか、コスロシャヒにすら検討がつかない。これから同社への投資を考えている人は迷うだろう。フードデリバリーの将来的な成長に賭けるのは賢い選択なのか、それとも競合ひしめく市場への参入は徒労に終わるのか?
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文 = ビズ・カーソン 写真 = ティム・パネル

この記事は 「Forbes JAPAN 100年「情熱的に働き、学び続ける」時代」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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