サンフランシスコの当たり前「男女共用トイレ」は快適そのものだ

(左)皮膚科のドクターオフィス(右)Paris Baguette店 以前は男性トイレだった(いずれも筆者撮影)


最初の頃は居心地の悪さを感じた。男性の後に入ると便座が上がったままで、不快感を催した。しかし1週間ほど経つと慣れてきた。最近では、男性が前だと、所要時間も短いし、女性よりきれいに使っていることが多く、今では、前にいる人が男性の方がよくなってきた。

4月に全米から7000人のビジネスウーマンが集うPBWC(プロフェショナル・ビジネスウーマン会議)がサンフランシスコで開催され参加した。この会議はモスコーニセンターという大会場で行われた。これだけの女性がトイレに集まったらどうなるのだろうか、と心配だった。

この会場は未だにトイレは男女別々。ところが休憩時間になると、誰もが当たり前のように躊躇することなく男性用トイレを使用。サンフランシスコという土地柄か、あるいはリベラルな考えの人が多いせいか。長い列にならなかった。トイレにジェンダーの境目がない世界は、合理的で理にかなっていると思った。

近くの小学校へ行ってみた。ここも男女共用になっていた。サンフランシスコの小学校では、2015年から男女別トイレを段階的になくしていくことが始まった。「ジェンダー・ニュートラルなトイレ」を目指している。これは、セクシュアル・マイノリティの児童への対応からだ。

この背景には、児童を無理にどちらか一方のジェンダーに特定する必要はない、という考え方があり、男女どちらの性にも合致しない生徒が恥じることなく学校生活を送れるようにという配慮から行われることになった。



未来のトイレ

アメリカでは、「福音派」と呼ばれる保守派のキリスト教信者が同性愛者、トランスジェンダーを罪だと非難している。闘っていかなくては、権利が得られない現実がある。そんな中でもカリフォルニアのようなリベラルが強い地域では、大きく変わってきている。

日本では、アメリカと違い、宗教がトイレ問題に関与することはあまりないだろう。しかし、日本では法律上、男女の区別が義務付けられており、犯罪の温床、盗撮懸念など解決するべき問題は多々ある。しかし、狭い土地事情から、男女共用のトイレが増えれば、合理的だし、日本の8.9%(2019年電通調査)のLGBTQの人たちの不安が和らぐ手助けにもなるだろう。

また、最近の訪日外国人の増加や2020年の東京五輪開催を控え、「男女トイレ共用問題」の対応を考えるには良い機会ではないだろうか。

日米共々、「みんなのトイレ」が増えることが未来のトイレのあるべき姿で、良い効果を生む可能性が十分に考えられられると思う。

サンフランシスコのある場所で、こんな表示を見つけた。

未来はこうなって欲しいものだ。



連載:サンフランシスコ・ナウ
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文=アントラム栢木利美

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