ビジネス

2019.06.26 15:00

手術ロボ「ダ・ヴィンチ」の独占市場は終わり、熾烈な競争へ


問題はもう一つある。最近、アップルが売り上げ不振を警戒することになった原因とよく似た事態だ。すなわち、パイオニア企業は、爆発的な成長期間を経た後は自分たちの元々の市場の飽和に直面するという問題だ。そのため、売り上げの頭打ちは避けられない。

グットハートは、新たな競合企業にどうやって対処していくのだろうか。インテュイティブは肺がん検査で医師を支援する装置の開発で新たな領域に進出しているほか、海外にも事業を拡大中だ。しばらくは先発企業としての優位性が助けになるだろう。病院はダ・ヴィンチの導入に伴うトレーニングや機材購入への投資をしているため、他の製品に切り替えにくい可能性がある。

また、インテュイティブは、まるでヘルスケア業界のバズワード集から引っ張ってきたような機能をダ・ヴィンチに追加している。拡張現実(AR)やビッグデータ分析、人工知能(AI)などで、インテュイティブの技術がトップに立ち続けられるようにダ・ヴィンチを進歩させている。

しかし、共同創業者のフレデリック・モールは、インテュイティブを03年に去り、その後オーリス・ヘルスと呼ばれる競合の医療用ロボット会社を設立して7億ドルを超える資金を調達した。同社は18年3月に肺の生検を支援するロボットでFDA(米食医薬品局)承認を得ている。

インテュイティブはオーリス・ヘルスに特許を侵害されたとして訴訟を起こしており、グットハートはこのかつての上司とは普段から連絡を取っていないと言う。オーリス・ヘルス側はインテュイティブの訴えを否認しており、訴訟は係争中だ。いずれにせよ、グットハートの次の9年は、これまでの9年に比べて闘いの様相を呈するものになる。


ゲイリー・グットハート◎インテュイティブサージカルCEO。カリフォルニア大学バークレー校とカリフォルニア工科大学で工学の学位を取得し、スタンフォードの独立研究所、SRIインターナショナルを経て同社へ。

文=ミッチェラ・ティンデラ 写真=ティモシー・アーチボルド 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN 100年「情熱的に働き、学び続ける」時代」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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