決断を早めるための「土壌」づくり
──起業家の素養(第2話リンク)の3つめに挙げていらっしゃる「決断すること」とはどういったことでしょうか?
例えば、日本の政治で言いますと、アベノミクスになる前の日本はあまり変われていなかったように感じます。それは「調整」するばかりで、誰も「決断」できていなかったからだと思います。こうした問題は会社経営においてもよくあります。「メンバーがかわいそう」という情や、「このプロジェクトは誰かがやってくれるはずだ」という依存により判断を先延ばしにしてしまうケースが多々あります。
例えば、組織の話。当時ある部門では20代のマネジャー2人の上に役員がおりました。このマネジャー2人が、役員を信頼していないと感じたので、即座に決断をして「わかった。半年間、横一列にするから、結果を出した方が上役でいいよ」と伝えたこともあります。こうした決断ができるかどうかがやはり大事です。しかし、決断は自分本位ですぐにできるものではなく、そのために周囲が受け入れる土壌を作っておくことも重要です。
私はメンバーに「私の判断基準は好き嫌いではなく、すべて会社がよくなるかどうか」と言い続けています。この方針で進める、新しいメンバーを入れる、リーダーを代える……、そうした決断はすべて会社がよくなるためです。納得できないメンバーもいるかもしれませんが、会社のための判断であるという軸は変えていないので、納得感はあると思っています。
──軸をブレさせないことが重要なのですね。
はい、そう考えています。どんなに私の判断に納得ができなくても、メンバーであるということはそのメンバーの履歴書の中に弊社の会社名が残るということです。仮に半年しかいなくても一生残る。つまり、会社が成長しないということは、メンバーを傷つけているということにもなります。それならば、会社が成長した方がいいでしょう、とこの話もメンバーによくしています。
決断できない自分と向き合った過去
──そういったご自身の「決断力」は、経験から培っていったのでしょうか?それとも、最初から持ち合わせていたのでしょうか?
学生時代、プロサッカー選手を目指してかなり過酷な練習に打ち込んでいました。しかし、サッカーをしながらも「決断力がないな」と痛感していたんです。
例えば、本田圭佑選手みたいに「俺にボールをよこせ!」と言えるキャラクターの選手がいます。今ならば、私もそんな選手になれたかもしれませんが当時は言えませんでした。サッカーでは、「シュートを打たなければ点数は入らない!」と揶揄されるのですが、残念ながら私はそのようなタイプの選手でした。そのため、コーチからは「勝負しろ」「決断しろ」と常に言われていました。