このような事情から、池上教授は、「多くの日本企業では学習が足りていません。中国企業と戦っていく場面も増える今後のためにも、もっと日本のリーダーに学習してほしい」と指摘します。
学習するには、内省する力も不可欠です。中国のエリートは、知識を獲得した後は実践に移し、その結果をもとに反省や内省を行い、次の学習を行うというサイクルで回しているようです。
以前このコラムでも詳しく書きましたが、私がいたGEでも、「自分に3つの質問をする」という内省力を身につける手法を習いました。自分にはどんなスキルが足りないのか、それをどうやって身につけていくのかを節目節目で深く考え、その後の行動に結びつけられる。学習と内省をセットにすることが大切なのです。
2. 家父長的なリーダーシップ
中国の民間企業では、多くのCEOが創業経営者ということもあり、その圧倒的権力により、多くの物事がトップダウンで決まります。その一方で、社会文化的にリーダーであっても、個人としては謙虚さが求められ、全体の利益のためには個人を犠牲にすべしとする集団主義傾向もあります。つまり、家父長的なリーダーシップに人間性を併せ持つことが要求されます。
では日本のリーダーはどうか。池上教授は、日本には、強引ではないが物事を決められないタイプ、あるいは、英断はできるが傲慢なタイプが多く、謙虚さと決断力の両方を持つ人が極めて少ないことに危機感を感じていると言います。
昨今、ハラスメントをはじめとするコンプライアンスが問題となっているのも、このことに起因するのかもしれません。
3. 成長へのこだわり
企業には、常に成長が課せられていますが、池上教授は、「欧米企業は会社の価値を高めるための成長だが、中国企業は事業拡大を追いかけている」と成長へのこだわりの違いを示唆します。
中国企業にとって、利益は目的というより事業の成長の副産物にすぎず、顧客の求める自社製品の供給を増やす拡大こそが重要で、その過程における恩恵はすべての人と分かち合えると考えているとしています。
それを踏まえ、「日本企業に足りないのは、成長へのこだわりではないか。企業の描く夢のスケールが小さくなっていることを憂慮している」と池上教授は断じますが、日本企業が大きな成長を描くためには、やはり学習力がキーとなると、私は考えます。
中国をはじめ、海外には大きなスケールで成長している企業が少なからず存在し、彼らが何を見ているのか、その視線の先を学ぶことで、私たちは自分たちの経営モデルやリーダーシップのあり方の見直しが可能になります。さらにそこから、グローバルビジネスで飛躍するためのダイナミズムを獲得するヒントが得られるはずです。
中国ビジネスを考えるうえでも、重要な示唆に富んだ「チャイナ・ウェイ」、ぜひ、一読することをお勧めします。
連載:「グローバル思考」の伸ばし方
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