ルーツは「孤独」 分身ロボット開発に人生をかける理由

左からオリィ研究所の吉藤健太朗、結城明姫


国際基督教大学教養学部に進学し、そこから経営や会計を学ぶために英ロンドンの大学に留学。海外の起業家とディスカッションを重ね、「生きた経営学」を身につけた。学びで得た知識を生かして吉藤とともに複数のビジネスコンテストに出場、賞を総なめにし、開発資金を調達していった。

そして12年、日本青年会議所の人間力大賞受賞を機に、オリィ研究所を創設する。


カメラやマイク、スピーカーを内蔵した分身ロボット「OriHime」のほか、眼や指先のみ動かせる人のためのデジタル透明文字盤「OriHime eye」など、孤独の解消につながる製品を開発している。

注目度が急上昇する今も、吉藤が重視するのは当事者の話を聞くことだ。月3回のペースでALS患者などの元を訪れ、プロトタイプや改良品を使ってもらい、必要としている人の視点で開発を進める。

「思いついたらすぐやる。実際に作ってみて初めて『これは違う』ということもわかる」

実は、優れたスポーツ選手から天才と呼ばれるクリエイターまで、共通しているのが人の話を「聞く」こと。聞き上手が能力を開花させるといわれている。さらに吉藤の場合は、ユーザーの声とともに現場を「見る」ことを重視する。何が必要なのかを、本人が理解しているとは限らないからだ。

見聞きし、作り、テストする。その先に見据えるのは、「ミッション」である、誰もがどんな状況にあっても人生を謳歌できる世界だ。


吉藤健太朗◎1987年、奈良県生まれ。高校時代に電動車椅子の新機構の発明に関わり、2004年の高校生科学技術チャレンジ(JSEC)で文部科学大臣賞を受賞。翌年のインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)ではグランドアワード3位に入賞する。早稲田大学創造理工学部在籍中に「OriHime」を開発し、12年にオリィ研究所を設立。

結城明姫◎1990年、東京都生まれ。高校時代に流体力学の研究を行い、2006年のJSECで文部科学大臣賞、YKK特別賞をダブル受賞。ISEF出場目前に結核を患うも、翌年の同大会でグランドアワード優秀賞に輝く。国際基督教大学教養学部に入学後、11年には留学先の英ロンドンで経営を学ぶ。12年、吉藤とともにオリィ研究所を創設。

文=瀬戸久美子 写真=武 耕平

この記事は 「Forbes JAPAN 100年「情熱的に働き、学び続ける」時代」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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