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2019.06.20

アップルがiPhone製造を中国外に移設へ、米中の対立激化に備え

Gettyimages

アップルは米中の緊張の高まりの中で、製造拠点を中国から移そうとしている。6月19日の「Nikkei Asian Review」が伝えたところによると、アップルは主要サプライヤーに対し、従来の15〜30%のプロダクトの製造を中国から東南アジアに移した場合の、コスト試算を行うよう指示したという。

台湾のフォックスコンは、米国で販売される全てのiPhoneの製造を中国外で行うことが可能だという。「当社の製造キャパシティのうち25%は中国外で可能だ」と同社の広報担当は述べており、「我々はアップルの要望に応えることができる」と話した。

この動きが及ぼす影響は甚大だ。アップルは1万人以上を中国で直接雇用しており、同社の工場やアプリのエコシステムに関わる人口は合計数百万人にも及ぶ。アップルとフォックスコンの関係は非常に密接で、アップルは多岐にわたる中国での製造プロセスに絡む決定を下す必要がある。

中国の柔軟でスケーラブルな製造工場があったからこそ、アップルの急激な成長が可能になり、フォックスコンは世界最大の製造受託メーカーとしての地位を確立した。

アップルの製造拠点の移設の影響を受けるのは、フォックスコンのみに限らない。製品の組み立てや製造を請け負う企業の多くが、アジア諸国やインドやメキシコなどを移設先の候補として検討し始めた。

「今後の方針を決定する上で、大手企業がどこに向かうのかが最も気になるところだ」とアップル製品の組み立てを受託する企業は、Nikkeiの取材に述べた。

中国は現在、アップルにとって最大の海外市場であり、同社の主力製品の90%以上が中国で製造されている。アップルはファーウェイ問題に絡む、中国政府の米国に対する報復措置の影響は受けていないが、今後は中国政府による輸出規制の影響を被る可能性もある。

アップルは中国市場の反応により株価や業績面に打撃を受けた過去があり、中国を代表するファーウェイの苦境が、同社にも悪影響を及ぼすことも懸念される。ファーウェイは米国の措置に対抗する意志を明確にしている。

米国民が慣れ親しんだ「設計はカリフォルニアのアップル、組み立ては中国」というスローガンは、変化を迫られている。さらに、製造拠点が中国外に移されたなら、再び中国に戻ることは難しいと思われる。今後の貿易交渉で、何らかの妥協が実現したとしても、全てを元通りに回復することは難しいだろう。

「アップルはサプライヤーに対し、製造拠点の移転に関する報告書の、明確な提出期限を定めていない」とNikkeiは報じている。「彼らは現状で考えうる最も適切な対策が何であるのかを見極め、中国の外に製造拠点を移した際の影響を推し量ろうとしている」とNikkeiは述べた。

アップルは本件に関しコメントを避けている。

編集=上田裕資

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