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では、オルトスクールのソフトウェアを取り入れる学校は増えているのだろうか。

ロサンゼルスの郊外に位置するカリフォルニア州のパラマウント市とアルカディア市に、オルトスクールのパートナーとなった公立学校が2つある。パラマウントは中南米系の住民が多く、市内最大の高校では4700人の生徒のほぼ全員が無償のランチを支給されている。STEM(科学・技術・工学・数学)教育を重視する新設校の一つが、オルトスクールのソフトウェアを試験的に使用している。

18年8月に開校したオデッセイ・ハイスクールには138人の9年生が在籍しており、いずれは12年生までの550人が学ぶ予定だ。すでに、3Dプリンターを備えた教室で課題に取り組み、その成果をプレゼンするといった活動にも取り組んでいる。

しかしパラマウントのライアン・D・スミス教育次長は、今のところ学区全体でオルトスクールのソフトウェアを採用する計画はないと話す。

「新設校なら従来とはまるで違うことを一から始めることもできますが、既存の学校ではそれ以前にやるべき仕事がたくさん出てくるでしょう」

ベンティラのプランはここで障害にぶち当たることになる。オルトスクールの現在のパートナーは、ほとんどが規模の小さい私立学校だ。公立の学区で顧客となった8つはいずれも限られた学校でのテストの段階で、拡大計画のある学区は2つしかない。

「パートナー学区で学ぶ25万人の生徒全員がオルトスクールを使用するようになれば、プロダクトの価格帯を下げ、利益を出すことができるだろう」

ベンティラはそう言うが、実現しなければオルトスクールの存続は難しくなるだろう。

ベンティラとそのチームが立ち向かう市場では、米国のK-12教育の改善という課題をデジタルで解決しようとする会社がひしめいている。だが、ようやく黒字を達成しそうな会社はあるものの、普及には成功したにもかかわらず多額の赤字を計上し、中国のゲーム会社に買収されたものもある。

とはいえ、オルトスクールに今も残る生徒たちは、実験校で良い成果を挙げている。年に2〜3回行われる数学、読解、作文の習熟度を測るMAPテストの昨年の成績は全米平均を34%上回っていた。中には有名私立高校に進む生徒もいる。

だがソフトウェアの売り上げを伸ばせなければ、会社の存続は望めない。

「これ以上できないという日が来るまでは頑張るつもりだ。(教育事業で)うまくやっても、称賛や支援はほとんど得られないだろうが」

ならば、なぜオルトスクールを続けるのだろう。

「この世界で本当に重要なことだと思うから。それにリソースを持っていて、なおかつこれを成功させられる人間がほかに大勢いるとも思えないしね」




マックス・ベンティラ◎ニューヨーク出身。貧しいなか奨学金を得ながらイェール大学でMBAを取得。大学在学中から起業、売却を繰り返す。グーグルではビジネス戦略やSNS「Google+」の開発チームなどで働く。2013年にオルトスクールを創業した。

文=スーザン・アダムス 写真=ティモシー・アーチボルド 翻訳=町田敦夫

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