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2019.06.20 11:30

パナソニックが浜松発のスタートアップと手を組み、狙うものとは?

(左から)コネクティッドソリューションズ上席副社長の青田広幸、コネクティッドソリューションズ社長の樋口泰行、リンクウィズ代表取締役社長の吹野豪、INCJ専務取締役の土田誠行

(左から)コネクティッドソリューションズ上席副社長の青田広幸、コネクティッドソリューションズ社長の樋口泰行、リンクウィズ代表取締役社長の吹野豪、INCJ専務取締役の土田誠行

6月17日、パナソニックは記者会見を開き、静岡県浜松市に本社を置くスタートアップ、リンクウィズと共同事業開発契約を締結したと発表した。

この共同事業は、パナソニックが1957年以来、60年以上にわたり展開してきた溶接をはじめとする熱加工事業の製造現場における知見や経験に、独自アルゴリズムの産業用ロボット制御のシステムソフトウェアの開発、販売を行うリンクウィズの技術を取り入れ、熱加工現場のプロセスを最適化する狙いがある。

会見に出席した青田広幸コネクティッドソリューションズ上席副社長は「これまで人による目視や経験、勘で行われていた溶接や検査プロセスを自動判定するシステムにより高性能な判定ができる」と語った。形状認識・解析、溶接、検査を自律型ロボットシステムソフトウェアに置き換えることでプロセスの最適化を図り、人手不足の改善や加工品質の向上などに貢献できるという。 

社会課題の解決を目指す

リンクウィズは、吹野豪代表取締役社長ら3名のエンジニアで2015年3月に創業したスタートアップ。会見で、吹野は「浜松は中小企業の集積地。かつては熟練工がいたが少なくなり、廃業も相次いでいる。そのためには働き方を変えなければいけない」と開発の意義を語った。その背景には、労働人口や熟練工の減少などの社会課題がある。リンクウィズに出資しているINCJの土田誠行専務取締役も「すべての投資における最上位の課題は社会課題の解決。

今回は、社会課題の解決に加え、日本の強みであったものづくりの再興を目指す」という。また同日、リンクウィズは、INCJをはじめ6社を引受先とするシリーズBラウンドの第三者割当増資を実施し、総額9億円の資金調達を完了したことも明らかにした。

そもそも今回の事業を推進するパナソニックの社内カンパニーであるコネクティッドソリューションズとリンクウィズとの出会いは2016年3月にまで遡る。昨年には、世界的な展示会で連携ソリューションを共同出展、32社の引き合いを獲得したという。

お客様のお困りごとを解決

コネクティッドソリューションズは、元日本マイクロソフト会長の樋口泰行のもと「現場プロセスイノベーション」をビジョンに掲げ、パナソニックが長年の製造業で培った経験や知見、ロボティクスを活かし、製造現場、物流現場、小売現場、外食現場での「つくる」「売る」「運ぶ」のプロセスを革新し現場の課題を解決することを目的に立ち上げられた。

会見で樋口は「従来のパナソニックは自社製品が売れれば良いという考え方があったかもしれない。お客様のニーズを考え、商品だけでなくベンチャーとも協業し、ありとあらゆるパートナーを選択肢に入れ、お客様のお困りごとに対応していくのが基本的な現場プロセスイノベーションの考え方」と語った。

今後、リンクウィズはパナソニックの海外拠点を活用し、北米、中国、欧州へのグローバル展開を行っていくという。

文・写真=本多カツヒロ

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