ビジネス

2019.06.20

メルカリ、相次ぐ新事業撤退は「新陳代謝」か「衰退の始まり」か

2019年7月に終了する「メルカリチャンネル」(同社ホームページより)


利用者トラブルや先発との競合も

第2に「利用者のトラブル」だ。CtoC(個人間)取引となるフリマアプリだけに、出品者・利用者から「不心得者」が出てくるのは仕方がない。運営側であるメルカリも、そうした不正利用を防ぐ手立てを講じているが、抑えきれなくなれば社会問題化するリスクがある。サービス終了も止むを得ない。


toCサービスのトラブルには、どの事業者も頭を痛めている(Photo by まぽ)

地域コミュニティーサービスの「メルカリアッテ」は、近隣地域の人たちと直接会ってフリマや友達づくり、相談などのマッチングをするサービスとして立ち上げた。しかし、異性との出会いを求める投稿が相次ぎ、「出会い系アプリ」化する。

さらには高給のアルバイト募集が、実は商品やサービスのセールス勧誘だったという詐欺まがいのエントリーも。メルカリはこうした不正投稿を常時監視して削除したが、「無法地帯化」に歯止めがかからずサービスを終了したのではないかとの指摘もある。

メルカリは不正利用による苦情やトラブルが「メルカリアッテ」終了の利用ではないとしているが、不正利用多発が同サービスのブランドイメージを毀損したのは間違いなさそうだ。

第3に「先発サービスとの競合」だ。旅行予約・販売サービスには「楽天トラベル」や「ブッキングドットコム」、「エクスペディア」はじめ強力な先発サービスが多数存在する。「メルトリップ」は競合を避けるため、いきなり旅行商品を取り扱わず、先ずは個人の旅行体験を投稿してもらうことで旅行好きが集まるネットコミュニティーの構築を狙った。

ネットコミュニティーが固まった後で、彼らを対象にした旅行商品の予約や付帯サービスなどの販売に乗り出す戦略だった。「メルトリップ」は利用者が旅先で撮った写真を投稿すれば地図情報上に旅程の形で自動的にまとめられ、旅先での思い出や現地情報などを共有できるアプリだったが、実はすでにここにも強力なライバルが存在していた。

国内だけでも3300万人以上が利用している画像共有SNSの「インスタグラム」である。「メルトリップ」は旅行に特化したという優位性はあったが、よほどの旅行好きでない限りは年に数回程度の体験にすぎない。ならば日常使いの「インスタグラム」で用は足りるし、発信力も段違いに高い。加えて「インスタグラム」の利用者が、メルカリと同じ若年層に多いこともマイナスに働いた。


メルトリップの前にインスタグラムという「高い壁」が立ちふさがった。
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文=M&A online編集部

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