獣医師が考える「人間と動物のつながり」

農林水産省動物検疫所提供

人工知能(AI)の社会実装が急速に進む中、人の仕事が取って代わられるのではないかと議論が沸騰している。物づくりや接客、気象予測、家電製品への搭載など、AI技術は身の回りで確実に浸透しつつある。

そんな昨今、人の能力の及ばない仕事に従事する「動物」の話題を耳にすると、何とも微笑ましさを感じてしまう。今回は、そんな事例のひとつを紹介したい。

アリーナ・ザギトワ選手の愛犬、秋田犬のマサルの来日が期待された3月、犬の出入国に関する「検疫」について紹介した。海外から犬を入国させるためには、さまざまな手続きや措置が必要であり、結局マサルはこのルールを満たすことができず、来日は叶わなかった。

そんな出入国と検疫の玄関口である、国際空港、海港を中心に、海外からの違法な持ち込み物の摘発に活躍するのもまた、犬たちだ。手荷物受取レーンを勇壮に探索する犬の姿を、ご存知の方も多いだろう。

空海港で活躍する犬たちには、財務省税関の管轄で、違法薬物の発見を行う「麻薬探知犬」、農林水産省動物検疫所の管轄で、動植物(畜産物を含む)の持ち込みを発見する「検疫探知犬」がいる。

両者ともに、ハンドラーとなる職員に携えられ、匂いを頼りに荷物の中の対象物を探しあてる。一見すると見分けがつかず、管轄も摘発の対象物も異なることは、意外かも知れない。40年前から導入されている前者に比べ、後者は導入から14年と歴史が浅い点にも違いがある。

こういった探知作業を犬が担うのは、もちろんその優れた嗅覚ゆえだ。

犬種によっても異なるが、犬の鼻には、匂いの情報を受け取る嗅細胞が人間の40倍にあたる約2億個あり、さらにその情報を処理する脳内の領域も広いと考えられている。

環境を把握し、コミュニケーションをとることに、匂いを用いるのは多くの動物の特徴でもある。人に比べると犬の嗅覚は格段に優れているが、動物の中では、とりわけ優れているというわけではない。同時に、「パートナー」になり得るということが重要なのだ。人は、犬の持つ生理的特性と気質をいまだに利用し、活動を共にしている。

文=西岡真由美

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