ビジネス

2019.07.15

場所、時間、雇用形態… 境界があいまいになる新しい働き方の組織とは

GEN UMEKITA / Getty Images


中小企業では1人の求職者に対しておよそ10社が競合するという状況ですから、なかなか良い人が採用できない、というのがもはや当たり前。

日本の企業の数十パーセントを占める中小ですらこのような現状なわけですから、日本中ほとんどの会社で優秀な人材を採用することがほとんど不可能に近い状況になっているのです。

人材市場は「売り手市場」と「買い手市場」を交互に繰り返しながら成熟してきましたが、今までと違うのは「人口減少」というフェーズに入っていることです。企業が欲しがるのは常に20代、30代の若手ですが、その若手がどんどん減っていき、今後増える見込みはほとんどありません。まさに構造的に「慢性的な人手不足」の状況が続いていくのです。

一方、個人の側で見ると、フリーランスや副業など「新しい働き方」と言われる働き方を選択している人は2018年には1119万人と2015年の913万人から約200万人も増えています。(ランサーズ「フリーランス実態調査2018」)

今は実施していなくても、今後「副業や兼業をしてみたい」と回答している人の割合は約40%にのぼります。(みずほ総合研究所2018年10月15日「副業・兼業の広がりの可能性」)

また2019年4月1日に施行された通称「働き方改革法案」によって1人あたりの残業時間が規制されることで働く時間は短くなっていくことも予想され、生涯1社だけで働く人が減っていく流れは、今後ますます加速することになると予測されます。

この2つの流れは不可逆的な流れであり、これまで当たり前と思われていた「週5日フルタイムで働いてくれる社員を採用する」という企業活動が極めて難しくなり、採用のために企業がかけないといけない時間や労力は右肩上がりで上がっていくことになります。

結果として、「オフィスに出社し、週5フルタイムの社員が当たり前でそれ以外は少数派の組織」から「働く場所も時間も雇用形態も多様であり、従来あった境界があいまいな組織」へ転換していかなければ会社組織は成り立たない──そんな時代に突入し、経営者や人事の考え方や組織運営方法自体も変えていくことが求められていきます。

この連載では、新しい働き方時代の組織である「ボーダレス組織」の運営方法や、そのメリット、デメリット、課題などについて具体的に書いていければと思います。

文=石倉秀明

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