「居心地の良さ」にこだわるリゾートは、「戻りたくなる家」のようだった

モルディブの海


日系料理はシーフードが主役。モルディブの重要な外貨獲得手段は、観光と漁業。そんなもう1つの魅力である漁業資産を生かした料理でもある。

多くの食材は飛行機で何時間もかけてモルディブにやってくるが、シーフードだけは漁船で、近くの島から、その日に獲れたものが運ばれてくる。このレストランで使う魚の95%が地元モルディブ産の生の魚だ。基本的に冷凍の魚は使わない。その必要がないからだ。

海外から輸入する数少ない魚の1つがサーモンだが、それも、ヘアが母国でのネットワークを生かし、オーストラリアから生のものを仕入れている。

メニューの一つに、セヴィーチェに似たティラディートというものがある。セヴィーチェは魚を角切りにするが、ティラディートは刺身のようにスライスするのが特徴。ソースは醤油ベースの日本的な味わいのものに、ゆずとライムを加え、ペルー産の大粒のトウモロコシを合わせている。



柑橘類が醤油の旨味に香りのレイヤーを加え、カリカリのトウモロコシが快い食感を与えるコンビネーションだ。「楽しくて、難しく考えなくていい、居心地の良い料理」とヘアはいうが、かつて日本で、「食材、香り、食感」をコンセプトにした高級フランス料理を提供してきたヘアの料理に対する考え方は、ここでも生きている。

デザートの「ワォ・プレート」は、何種類ものデザートが、南国らしいバナナの葉などとともに大皿に盛り込まれ、テーブルに運ばれてくると思わず「ワォ」と言ってしまう、そんなひと皿だ。フィーリングを大切にするヘアの「驚きと楽しさを演出したい」という思いが詰まったデザートだ。

日本料理 vs 日系料理

飲み物では、世界のトップバーテンダーを決める「ワールドクラス グローバルファイナル」で優勝した世界一のバーテンダー、金子道人がつくる日本酒カクテルが楽しめる。

甘い桜の香りをまとわせ、柑橘類を効かせたすっきりとしたカクテルは、日系料理にも、そして常夏のリゾートの空気にもよく合う。そのほか、日本酒の飲み比べセットなど、思わず飲みながら会話が弾みそうなものもあり、こちらはワインも含めてボトルでもオーダーできる。

また、ヘアは、次の楽しい仕掛けも考案中だ。例えば、日本料理と日系料理対決。「対決」の日は、前菜、メイン、サイドディッシュ、デザートからそれぞれ2皿ずつをテイスティングコースで提供し、ゲストにどちらが美味しかったかを紙に書いて「投票」してもらうエンターテイメント性を盛り込む考えだという。


日本酒の唎酒セットと金子道人さんによるオリジナルカクテル
次ページ > 「顔の見える」ことへのこだわり

文・写真=仲山 今日子

ForbesBrandVoice

人気記事