「居心地の良さ」にこだわるリゾートは、「戻りたくなる家」のようだった

モルディブの海

モルディブといえば、思い浮かべるのは水上ヴィラだろう。この島々のほとんどのリゾートは、伝統的なモルディブスタイルの家屋が海の上に建ち、旅行客にエキゾチックな体験を演出している。

そんなモルディブの概念を覆す、シンプルな白一色のモダンなヴィラが目をひくのが、バア環礁にある「アミラフシ」だ。

「オープン当初、このヴィラは、同業者にもゲストにも驚かれましたよ」と笑うのは、この業界に33年間関わってきた、マーク・ヘアだ。ロンドン、モルディブ、東京、タイと世界を渡り歩いてきた彼にとっても、それは大きな決断だった。


マーク・ヘア(MarkHehir)

「誰もがやらないことをやる」そんな勇気ある決断で、これまでも、同じモルディブにある「フィノール」(今年5月、ドイツのホテル会社に売却)などの人気リゾートを成功に導いてきた。

オープンから4年半が経ったいま、「みんな慣れたんですかね、この斬新さに驚く人もいなくなりましたよ」と笑うが、それはアミラフシのこれまでにない新しいコンセプトが、広く受け入れられたということでもある。

なぜ「シンプル」にこだわるのか?

「アミラフシ」を直訳すると、「私の島の家(My Island Home)」だ。訪れたお客様の気持ち(フィーリング)を演出するブランディングが得意で、数々のリゾートの立ち上げに関わったヘアが、このリゾートに設定したのが「家」というコンセプトだった。

「リゾートでは、通常、お客様は4泊から7泊されます。そして、基本的に島から外に出ない。だからこそ、ここが居心地の良い場所であるということをいちばん大切にしようと思ったのです」

アミラフシのゲストは世界20カ国以上から訪れる。そのライフスタイルはさまざまだ。となれば、シンプルな削ぎ落としたスタイルのくつろぎ感こそ、ゲストにはフィットすると、ヘアは考えたのだ。

筆者がステイしたのは、オーシャンリーフハウスというカテゴリー。「家」というコンセプトだけに、ヴィラではなく、ハウスと名付けられていた。


ヴィラは珊瑚礁の端から数メートルの距離にあり、ちょっと泳げば熱帯魚の群れに囲まれる。

250平米ある部屋には、ベットルームとは別に、ゆったりとしたリビングルームがあり、そこにはそのまま寝られそうな大きなソファとコーヒーテーブル。広々としたバスタブもあり、外にはプライベートプールが備わっている。

部屋にはコーヒーメーカーだけでなく、ボタン1つで紅茶やハーブティーが楽しめる「ティーメーカー」も置かれ、各部屋には24時間対応のバトラーサービスがつく。部屋ごとに携帯電話があり、ボタン1つで、バギーの手配を始め、必要なものを手配してもらえる。
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文・写真=仲山 今日子

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