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2019.06.30

ヒト、モノ、カネ。投資対効果を生むために最も重要なのはどれ?

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私はリモートワークを推進するサービスを提供する「キャスター」という会社を経営し、この5年ほど、全社員がリモートワークを行う「フルリモートワーク」形式で会社を運営してきました。

契約形態も自由度が高いため、現在我が社で仕事をしてくれている人は700名を超え、さらに日々拡大しています。

さまざまなリモートワークのサービスを模索しているうちに、「新しい働き方」を考えるには、主に「働く側」「働いてもらう側」の2つの側面で考えなければいけない、と気づきました。

私はこれまで、新しい働き方を発信するときには常に「働く側」を重視していました。しかし昨今は、「働いてもらう側」、つまり経営者層も新しい働き方を軸とした経営を求められています。

たかだか5年程度で、私が経営の全てを理解しているなどとは考えておりませんが、経験から得た気づきを発信することで、新しい働き方が全ての人にとって良きものとなればと思い、「新しい時代の経営論」と銘打って発信します。


まずこの話を始める前に、自分にとっての「経営」とは何か? についてお話します。

結論から言うと、「ROI(投資対効果)を生み出すこと」。そして ROIとは「投資を行い、結果を回収すること」です。

投資する対象として代表的なのは「ヒト、モノ、カネ」。そして、返ってくるのもその3つです。

世の中で言われる経営指標とは、ROIをカネだけに換算して分かりやすくしたものだと認識しています。

株式会社は、「ゴーイング・コンサーン」(継続企業の前提)が必要とよく言われます。ゴーイング・コンサーンが成り立つのも、投資対効果を出し続ける体制を維持し続けることで生み出される、と私は定義しています。

では投資され、返ってくる「ヒト、モノ、カネ」のうち、PL(損益計算書)やBS(賃借対照表)に現れてこない数値はなんでしょうか?

それは「ヒト」です。モノとカネは数値化されており、ヒトはそもそもコストとして「負債」に計上されます。

数値として現れてないのはBS上の資産としての計上であり、PL上は、個々人の生産性の改善などが間接的に計上されているのです。

株式投資などでも、「ヒト」に関する数値指標はほとんど目にしません。「ヒト」は投資対象であり、そして効果として返ってくるのにも関わらず、です。

昨今ではモチベーションクラウド(組織に所属する人の組織に対する価値をモチベーションという指数にて定量化する仕組み)などを利用し、モチベーションなどを指標とし、組織の「健康状態」を観測することができます。そうした社内の健康状態をスコアリングする事例も出てきましたが、ヒトに関する数値指標の設定はまだまだ始まったばかりの状況だと認識しています。
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文=中川祥太

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