「知識を得るだけの学びは不十分」米ベスト・サイエンス著者に聞く

イラストレーション=Koyoox


効果的な6つの学習ステップ

まずは自分の学ぶ動機を特定し、学習の価値を見出すことから始める。学びたいと自分から思うようになって初めて、我々は積極的に学ぶことができる。学習することとは、学ぶ対象の意味を知ることでもある。

次に目標設定だ。前提となる知識や、集中して何が学びたいのかを見きわめ、計画を立てて目的と目標を設定する。それからスキルや知識を伸ばす練習が必要だ。学習が始まったら自分のパフォーマンスのフィードバックを受ける。自分のミスに気づきスキルや知識を磨く。苦労して繰り返し練習し、他の人よりも優れたものにする。

そして専門知識を発展させる。知識を応用し、基本のスキルと知識から発展した、深い意味を持つ理解を形成する。さらに学んだことを関係づける。個々の事実や手順ではなく、その分野の根底にある体系や関係性を理解する。

最後に重要なのが再考だ。人々はしばしば自分の学んだことに自信過剰になってしまう。自分の学習について見直して学び直すことが必要だ。

人々は間違いを犯してもそこから学び直すことができるし、困難を乗り越えて学ぶことは大事だ。例えば、人々は読んだり聞いたりするだけの受動的な学習方法を選びがちだが、読んだ後に自分で質問を作って答えたり、自分自身や他人に内容を説明する能動的な学習は大変だが効果的だ。

──『Learn Better』のエピローグでは「人は誰でも『自分なりの学習プロセス』の主体にならなければならない」という教育心理学者バリー・ジマーマンの言葉を引用しました。

私たちは知識が外部にあって、インターネットや電話を介して知識にアクセスできると思いがちだが、学習とはそのようなものではない。ジマーマンが「学習能力とは生まれつきの頭の良さや教育環境によるものではなく、学習者自身が自発的に能力を開発するプロセスだ」と言うように、一人ひとりが自分なりの学習方法を持ち、自分に合った学習の体系を発展させるべきだ。

私は子どものころ、学ぶことに悪戦苦闘した。学習プロセスを知らなかったからだ。人よりも時間と努力が必要だったが、助けを得て大学に進み、シンクタンクの研究者になった。効果的な学習プロセスをマスターすれば、誰でも自らの能力を発揮することができる。私はより多くの人にその方法を知ってもらいたいと願っている。学習のあり方を改善して学習の質が上がれば、将来的な収入増加にもつながる。将来の経済状態への最大の投資にもなるのだ。


アーリック・ボーザー◎米国先端政策研究所上級研究員、The Learning Agency創設者。学習障害があり中学生時は特別支援教室に通っていた経験などをきっかけに、教育についての研究に従事。ビル&メリンダ・ゲイツ財団のアドバイザーを務める。ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙などに記事を執筆。

文=成相通子

この記事は 「Forbes JAPAN 100年「情熱的に働き、学び続ける」時代」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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