1936年に非営利団体によって創刊された「コンシューマーレポート」は、あらゆるジャンルのプロダクトをカバーし、なかにはクルマも含まれる。自分たちの試験場を持ち、ハンドリングや乗り心地から、さらに耐久性までを評価し、それをレーティング(採点)するのだ。
クルマは消費者の関心がとくに高い分野なので、特集号が発売される。米国で販売されている新車と中古車が評価対象で、ブランドの総合評価もくだされる。2019年、その特集号「オートイシュー」でトップに輝いたのはスバルだった。2018年は7位だったのが、6社抜きで1位に躍り出た。
ペンシルバニア州アレンタウンの自動車ディーラー「CIOCCA」に置かれていた「コンシューマーレポート」の自動車特集号。
評価項目は50に及び、顧客満足度は顧客の聞き取り調査をもとに集計される。スバルの高評価は、「消費者に性能がよく、トラブルのない製品を提供している」点が消費者に信頼されているからだと「コンシューマーレポート」誌は説明する。
米国では「コンシューマーレポート」誌の評価は消費者に高く信頼されている。その背景には、同誌が1956年に早くもクルマへのセイフティベルトの装備義務化を訴えていたり、クルマ以外ではたとえば喫煙による健康被害のキャンペーンがある。昨今ではEシガレット(電子タバコ)の害を同紙ではさかんに取り上げている。
米国での消費者運動は20世紀初頭に始まった。当初は食品や薬品の安全性が問題にされ、1920年代になると消費者は正しい知識によって製品を選ぶべきだという思潮が広まる。スチュアート・チェイスとフレデリック・シュリンクによる「ユアマネーズ・ワース(Your Money’s Worth)」が1927年に発行され、これが「コンシューマーレポート」誌へと発展していくことになる。
「結果は大いに参考になった」
では、「コンシューマーレポート」誌はどのような影響力を持つのか。2019年の「オートイシュー」発行から2カ月ほどした4月、米国東海岸でスバル車のディーラーをのぞく機会を得た。
行ってみたのは、ペンシルバニア州アレンタウンの「ショッカCiocca」というディーラーだ。巨大な敷地を持ち、店内にはスバルの新車、屋外には中古車がずらりと並べられていた。サービス工場や洗車場も大きく、日本とは規模がちがう。
「ショッカ・スバル」のグレッグ・シオッカCEOの下、60名の従業員がスバル車の販売に従事している。2019年3月単月で、新車と中古あわせて400台超を販売したというから、かなり力のあるディーラーだ。
店内にいると、たしかに「コンシューマーレポート」誌を目にする。それも訪れた客が手にしているのだ。話を聞いてみると、「結果は大いに参考になりました」と言う。「もともとスバルは好きだけれど、今回、スバル車を買うのに背中を押されたのはたしか」と50代とおぼしき女性客は答えてくれた。