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体験価値を向上させることで、対価の「入場料」を上げる

成瀬:僕は6年前の瀬戸内芸術祭のときに迷路のまちに来ていました。もともと、存在自体は知っていたんです。今回、一緒に取り組むことになったのは、大地の芸術祭で迷路のまちのアートプロジェクトの運営母体である小豆島ヘルシーランドの柳生忠勝(副社長)さんと話したのがきっかけ。

僕たちON THE TRIPは大地の芸術祭の公式ガイドを作成するとともに、オフィスでもある「キャンピングカー」を作品として出展していました。そこに足を運んでくれたのが最初の出会い。その時、大地の芸術祭のオーディオガイドを聞いて頂き、必要性を感じてくれました。ちょうど僕たちも、新しい施策をスタートしたタイミングでした。施設にオーディオガイドを無料で制作し、体験価値を上げてその分美術館や寺社などの文化財の入館料をあげ、上がった分の売上をシェアする取り組みです。それで度々小豆島に伺い、今回の企画に携わるようになったんです。

当時、「妖怪美術館」というワーディング、コンセプトが上手だったので入場者数が120%増えていた。それはすごく良いことなのですが、個人的にはコンンテンツの中身をブラッシュアップする余地がある、と思いました。人は集まっているけど、コンテンツの中身が良くなければ長く続かない。妖怪美術館が持つ“妖怪自体”はコンテンツとして世界で唯一無二のものなので、体験も唯一無二にした方がいいのではないか。そういう話を佐藤さんたちとしていて、ここでしか味わえない体験を考えることにしたんです。それが、妖怪が語りかけてくる妖怪美術館。

佐藤:現代アートから妖怪美術館に切り替えてから展示の内容、空間の装飾など、すべて僕が考えたのですが正直、納得はいっていなくて。館長を務めてもらっている柳生忠平は創作活動に集中してもらうために、妖怪美術館の展示には関わっていなかったんです。忠平からは展示が「面白くないよ」と言われていましたし、コンテンツの中身はもう一段階、バージョンアップさせる必要性も感じていたので、成瀬さんと出会ったのは良いタイミングでした。

柳生:僕も館長と言われていたけれど、表向きに言われているだけで。やっていることは外観に妖怪を書いたり、メディアに出たりするくらいでした。当時は変な話、妖怪画家としての活動と、妖怪美術館の館長の仕事は別のものと分けて考えていたんです。ただ館長と名乗ってから、妖怪美術館の展示も僕の評価につながることがわかって。コアなファンの人は顕著に「面白くない」と言ってくれる。であれば、僕も展示内容から考えた方がいいんじゃないかと思い、リニューアルのプロジェクトに加わることになりました。



成瀬:コンテンツの中身、施設側の設備を含めて体験価値を向上させる。そのために音声ガイドを通じた、すべての導線をつくり直すことにしました。今までは4つの美術館があり、それぞれバラバラなテーマで妖怪が展示されていたんです。

佐藤さんと話していると今後、海外の人たちも増やしたいと言っていて。実際、海外の人にヒアリングしていくと歴史や文化背景を知りたがっている人は多い。また、日本人も妖怪のの存在を知っている人はいるけど、そもそも妖怪が何か知らない人は多いと思うんです。ほとんどの人が知っているのはゲゲゲの鬼太郎くらい。それを踏まえ、妖怪美術館に来たときに妖怪のことが体系的にわかり、海外の人たちが日本の文化としての妖怪に触れられる。これはコンテンツとして、すごく大事だなと。ここに来たら、妖怪とは何かがわかる。そして、それに見合うような体験をつくることを意識しました。

文=新國翔大 人物写真=Marco Vinicio Huerta Osuna

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