ビジネス

2019.06.18 11:30

サザビーズを4千億円で買った「通信業界の富豪」の正体

パトリック・ドライ(Photo by Christophe Morin/IP3/Getty Images)

パトリック・ドライ(Photo by Christophe Morin/IP3/Getty Images)

米競売大手の「サザビーズ」は6月17日、欧州の通信業界のビリオネアで、美術品収集家のパトリック・ドライに37億ドル(約4000億円)で同社を売却し、非上場化することで合意したと発表した。

ドライは彼が運営するBidFair USAを通じ、サザビーズ株を1株57ドルで取得する。これは6月14日のサザビーズ株の終値に61%のプレミアムを乗せた価格だ。サザビーズは上場企業としての31年の歴史に終止符を打つ。

今回の買収で、世界のアートシーンを代表する英国のオークションハウス2社が、共にフランスのビリオネアの支配下になる。サザビーズの競合のクリスティーズも、ラグジュアリーブランドを束ねる、フランスのケリングCEOのフランソワ・アンリ・ピノーの投資会社により、1998年に買収されていた。

ドライは、サザビーズから買収に向けた合意が得られたことを「光栄だ」と述べた。「サザビーズは世界で最も野心的でエレガントなブランドの一つだ」と彼は述べ、サザビーズの取締役らに感謝した。

サザビーズCEOのタッド・スミスは、ドライについて「彼は世界的なビジネスマンであり、本物を追求する姿勢で知られている」と述べた。

スミスは今後のサザビーズの在り方についてもふれ、「当社は過去数年で新たに始動させた成長戦略を、非上場企業としてより柔軟に実行していける。パトリックを新たなオーナーとして迎えられて、とても光栄だ」と述べた。

調査企業Consumer EdgeのアナリストのRaymond Stochelも、ドライによるサザビーズの買収は良い効果をもたらすと述べた。「支払いは全てキャッシュで行われ、今後の財政状況に左右されることもない。また、ドライ自身がアートコレクターである点も評価できる」

パトリック・ドライはモロッコ生まれのユダヤ人で、フランスとイスラエル、ポルトガルの市民権を持っている。欧州や米国でケーブルテレビや携帯電話サービスを行う電気通信事業者「アルティス」創業者であるドライは、同社の株式の60%を保有している。

オランダ本拠のアルティスを通じ、ドライはフランス最大のケーブルテレビ会社Numericableの発行株式の75%を保有している。彼は2015年に90億ドルを投じ、米国のケーブル会社Suddenlinkを買収したほか、2016年にはCablevisionを177億ドルで買収した。

これらの米国のケーブル事業者はアルティスUSAとして再編され、2017年6月に上場。ドライは同社の発行株式の35%を保有している。

編集=上田裕資

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