先週、米司法省のマカン・デラヒム反トラスト局長は大手テック企業を規制するための基本方針を明らかにした。連邦取引委員会(FTC)は、フェイスブックやアマゾンの捜査の準備に入ったと報じられている。
この動きについて、フェイスブックでインスタグラム部門を統括するアダム・モセリは「ひどいアイデアだ」と話した。アリゾナ州で開催されたカンファレンス「Vox Media’s Code Conference」には、モセリの他にグーグルやフェイスブック、アマゾンの幹部から集まり、彼らの企業が分割を強制された場合、被害を被るのはユーザーたちだと主張した。
グーグル傘下のユーチューブCEOを務めるスーザン・ウォシッキーは「ユーチューブがグーグルから切り離されたなら、想像もつかないことが起こるだろう」と話した。
「巨大なリソースがあるからこそ、ユーチューブから問題のあるコンテンツを排除し、プラットフォームの健全性を維持できている」と彼女は続けた。
一方、インスタグラムのモセリは、プラットフォームの分割によりヘイトスピーチの排除などの施策が難しくなると述べた。ヘイトスピーチや世論の誘導は、インスタグラムの親会社のフェイスブックが対応に苦慮してきた問題だ。
「企業を分割すれば、ヘイトスピーチなどへの対処が非常に難しくなり、利用者の安全が損なわれる」とモセリは続けた。
米司法省の考えは、彼らの意見に真っ向から対立するものだ。デラヒム反トラスト局長は6月13日、ソーシャルメディアや検索エンジン分野では、競争がないことがコンテンツの質の低下につながっていると述べた。企業同士の競争により、利用者の安全性が高められるというのが彼の主張だ。
アマゾンのクラウド部門主任のAndy Jassyも、他のテック企業の幹部らと同じ意見だ。「AWSをアマゾン本体から強制的に切り離せば、顧客の利便性が低下することにつながる」とJassyは述べた。
しかし、テック企業の幹部らが一致団結して反発の声をあげても、彼らの意見はワシントンには届いていない。2020年の米大統領選への出馬を宣言したエリザベス・ウォーレンやバーニー・サンダースらは、大手テック企業を解体するよう呼びかけている。
ただし、法的プロセスを進めるためにはかなりの時間を要する。議員らは今後の18カ月間で公聴会を開き、証言を募る必要がある。また、司法省もFCCも正式な捜査は開始していない。ただし、司法省はグーグルやアップルの調査を進め、FTCもフェイスブックとアマゾンを調査中であると報じられている。